スクリーンが待っている / 西川 美和

「すばらしき世界」の制作にまつわる話を中心としたエッセイ。
よかった。
穏やかで読みやすく、しかし各所にあらわれる表現のたおやかさ。
誠実で感受性ありながら、自分は映画ものがたり造り渡世をひとり進んでゆくのだというboldな心意気。

映画にまつわるXについて / 西川 美和

西川美和監督のエッセイ。

僕は西川監督の映画がかなり大好きなので、こんないい台詞や画がどうやって生まれてくるのか、どんな人から生まれてくるのか、とても興味がある。 随筆を楽しむような時間や心の余裕を数年ぶりに取り戻したので、kindleで購入し、二晩ほどかけて寝しなに愉しんだ。

「カエルとダザイ」を読んで、 日本の少年少女の一部が通過するダザイは、 欧米の少年少女の一部が通過するJoy Divisionかな、って思いました。 なんの脈絡もないけど。

blog.mrmt.net blog.mrmt.net blog.mrmt.net

MW

手塚治虫によるピカレスク・ロマン。むかーしどこかの漫画喫茶で読んだ。
今回は、たまたまKindle Unlimitedにあるのを見つけ、1巻は無料で読み、そのまま2, 3巻は有料購読して読了。有料といっても1冊あたり300円前後 かける 2冊 なので、そう負担ではない。

いわゆる「黒手塚」の一冊とされているらしい。極めて面白い。
十数年まえに映画化されたらしいが、この作品の極めて重要な軸、主人公と神父の同性愛関係がすっぽり削られているらしく、それだと神父の犯罪者を追求し断罪ししかし愛している苦悩がなくなり、単なる荒唐無稽な犯罪劇にしかならないんじゃないかな。映画「ボヘミアン・ラプソディ」から音楽を抜きました的な。

MW 1

MW 1

Amazon
MW 2

MW 2

Amazon
MW 3

MW 3

Amazon

シェパード / フレデリック・フォーサイス

フレデリック・フォーサイスといえば「ジャッカルの日」「戦争の犬たち」といった重厚な長編を著す作家という印象が強いが、短編も決して悪くない。というか良い。

これは短編3つから成るかなりの薄い一冊だが、「ブラック・レター」「殺人完了」とも、小粋できりっと毒の効いた掌編というやつで、とても良い。 そして表題作「シェパード」は、戦場ロマンと言いますか、松本零士「ザ・コックピット」あたりと通底するファンタジックな要素を含んだ一編。

すっかり目も悪くなったのでKindleで読みたかったところだが、絶版らしく、角川文庫の古本を取り寄せて読んだ。

blog.mrmt.net

blog.mrmt.net

blog.mrmt.net

blog.mrmt.net

プロジェクト・ヘイル・メアリー

「火星の人」の著者アンディ・ウィアーの作品。昨年のブラック・フライデーのときに割引価格990円で上下巻ともKindle版で買ってあったが、なかなか読む暇がなかった。

おもしろかった! ラノベほどではないだろうけど、読みやすくしたハードSFといえる一冊だろう。 ジェイムス・P・ホーガンの名作「星を継ぐもの」にちょっと迫るものがある。 突然とんでもない状況で覚醒した主人公の主観と、過去の話の流れが交互に描写される。

これ以上はネタバレになってしまうからあまり書けないけど、
中ごろから物語の中核になる「あれ」を、次第に愛おしく感じてしまう感情の動き体験も、本書の特徴ではないだろうか。あー、ロッキーのフィギュアほしいなあ。

blog.mrmt.net

blog.mrmt.net

blog.mrmt.net

Clean Craftsmanship 規律、基準、倫理

プロのソフトウェアエンジニアとしての心構え、思考法、コミュニケーション、マネジメントするほうされるほう、といったあたりを扱った本だと思って購ったが、前半半分ちょっとが結構具体的なTDDの実践法で、その後は若干駆け足でコード品質などについての話。

TDDはクラフトマンシップの具体的手法の一つに過ぎないと思うので、あれ、結構各論の話が始まっちゃったな、本の半分ぐらいになってもまだ続いてるな、おっと後半で他の話も採り上げはじめた、終わった。という読後感。
この本が目指すものはとてもよいと思うのだが、なぜそうすると良いのかの論理固めがまずあり、その実践手法の紹介もひととおりあり、という構成のほうが良かった気がする。

この本を読むぐらいの人であればTDDはある程度知っているだろうし、詳しく知りたければTDDの本を読むだろう。著者は、ついうっかりTDD実践について書きすぎてしまい、もっと網羅性やガイドラインとしての構成が必要なことに気づいたが、ちょっと遅かった。のではないだろうか。

良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 - 保守しやすい 成長し続けるコードの書き方

1995年ごろ (Windows NT 3.5にWin32sサブシステムが追加されて3.51になったころ), IRIX + ANSI CからVisual C++に乗り換えることになった僕らは、職場でいわゆるGOF本を読まされた。
しかし文体と内容が高踏的で、語られている設計手法を自分ごととして理解するには知見も経験も不足しており、どれをいつなぜ使うのかもピンとこなくて、デザインパターンとはなんだか難しいものだなぁ、という読後感のみが残った。読後感なんていうほど立派なものではなく、食べきれなかったご飯のあとのげっぷみたいなものだ。

当時僕らにGang of Four本を読ませてくれたほうの立場を考えると、若手にC++開発環境を与えたはいいが、でっかいクラスになんでもいっぱい詰め込んだり、それもつぎはぎのコードでぶくぶく膨らんで…… あとあと自分たちみんなが辛くなることを分かってもらいたい…… といった事情が想像できる。しかし、この手の課題のあるべき設計論だけをエッセンシャルに記されても、学ぶべき人たちには理解や体感のためのとっかかりが難しいだろう。まさに銀の弾はないのだ。

この本には、そういった課題を起こす人たちが咀嚼でき理解しやすいよう、 具体例や比喩をふんだんに載せ、こういうコードはこういう問題があるから後々よくないんだよ、こうすると良いんだよ、というアドバイスがぎっしり詰まっている。地に足がついている。先人たちの理論へのreferも適切になされている。

大人には、「あちゃー」というコードに接した時、 そのコードを書いた人と同じ目線に立ち、コード改善とスキル成長を助ける責務がある。 そのとき、自分の経験知見のみを出発点にしてしまうと、結局自分の主観の押し付けになってしまったり、issueごとの対処の比較ができなかったりブレも生じてしまうだろう。

このあたりのキャリブレーションをしないとな、と思っていたが、 2022年にまたデザパタ本を読むのはヒストリカルすぎるので、手頃な一冊を求めていた。
文中で示されているサンプルコードはJavaになっている。 いまJavaがどの程度前線で使われている武器かというとなんともだが、 OOPにまつわる諸問題を汎用的に例示するなら適切だ。 practicalなpesudo codeといったところだ。

LEADER'S LANGUAGE 言葉遣いこそ最強の武器

コーチング、エンパワメント、アジャイル、サーバントリーダーシップあたりを扱った一冊。Kindleで読んだ。

うーん、この手のことを学ぶため、何よりもまず最初に読むべき一冊、とまではいかないかなあ。内容がちとばらけていて、2/3程度で収められそうな気がする。

このひとは米海軍叩き上げの艦長らしく、その時の経験をもとに書かれた本だが、であればその体験を直接綴ったこちらの本のほうがいいのかも。

あるいは、この映画を一本観るのでもいいかも。 当時、管理職向けの危機管理とサーバントリーダーシップみたいなテーマでの試写会もあった気がする。潜水艦って究極の人間組織なのかもね。

K-19(字幕版)

K-19(字幕版)

  • ハリソン・フォード
Amazon

プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで

多忙に紛れて積ん読になってたのですが、読了。
読むというより、よくも漏れなく横断して網羅したなあ、すごいなあと。 ほんとにすべてMECEに書いてある。

自分もイントレプレナーのインキュベーション (社内起業家の育成支援) のため、ゼロイチ、イチヒャクの一気通貫のフローをまとめたり資料化したりしたことがあるので、読みすすめるにつれ、だよね、ですよね、うわ大変、この知見をシリアライズする気合と持続性は凄い、と思いました。
これは体系・辞典みたいな一冊なので、ふむふむと読んで覚えていく読み方では、体力知力が続かない。要点が400ページ列記してある濃度の本だ。「コレはあの本のあの辺に書いてあるに違いない」という、外部インデクスの勘所だけまずは体に入ればいいだろう。それで十分強くなる。

大学とかで半年かけて輪講とかもいいかも。おじょじょ先生やった!