バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

主演のマイケル・キートンが、単に落ち込んで苦悩するだけではない、表現にもつながる狂気や「ぬるっとした芸」も醸し出す落ち目の俳優を演じていて巧い。
主人公がかつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で脚光を浴びていた、という設定自体、彼が主演していた「バ●トマン」にびんびんに重ねてきているわけで、これは物語の外のことではあるけれど、役者をひときわ濃くさせる。「ギャラクシー・クエスト」のアラン・リックマンに構造が似ている。
エドワード・ノートンもいい。サイコっぽい役やらせると実に巧い。

ストーリーは、虚実ないまぜ? 現実と超能力あるいは妄想が時に入り乱れるし、解釈は観客に委ねられるが、乗り逃げすんなと金を取りに来るタクシー運転手が、「ファイト・クラブ」における監視カメラのような、ここにヒント置いたからねという監督からのメッセージなのだと受け取った。 とはいえ、ラストシーンの解釈はさらにどうとでも取れるが、そこを支えるエマ・ストーンの笑顔と目力も実にいい。

生いジャズドラムの多用もイイ。ニューヨーク感も醸し出される。撮影もひたすら長回し風で、劇中劇の面白さをさらに倍。巧い役者、巧い撮影、巧い音、いろんな小物など、映画ずきにはお勧め。廊下のカーペットの模様はアレかい!もそうだが、娘のサムの部屋のマットの模様は同じシャイニングでも237号室のやつで、この女は虚実のバランスを壊しにくるヤベえ奴だぜ、という示唆かと思ったぜ!