Genesis / Genesis

1984年作品らしいから、かれこれ24年前の曲だ。
仕事をしながら、いろんな人のiTunesライブラリを聴いていたら
(音楽を聴きながら作業するのが効率アップになるならまったく結構なことだし、そんなわけで仕事場のセグメントにはいろんな人のiTunesライブラリがDAAPで渦巻いている)、
突然 Genesis のこの同名アルバムを見つけ、なつかしさと感動でぶるぶる。さっそく iTunes Store で入手。

なんといってもA1の Mama が名曲中の名曲だ。イントロのインダストリアルっぽいドラム・シーケンスはたいへん印象的だ。

(パっとはじける破砕音は、Sequencial CircuitのDrumtraksのhandcrapを,tuningツマミをかなり落として鳴らした音。8ビットかつレートを落としたことで前に出てくるジッタ・ノイズが気持ちよい。80年代中盤のイギリスでの定番手法のひとつ)

Phil Collinsの、切々と伸びる、しかし時おり狂的にはじける、そしてこの曲の特徴のひとつであるサイコな唸り笑い声にいたるヴォーカル・ワークはたいへんに素晴らしい。フィル・コリンズって「なんか器用なポップ商売屋」ってイメージがあってそんなに好きではないけど、この Mama 一作だけで、それでも英国プログレバンドの名門のひとつ Genesis を一時期背負った男として認めざるを得ないだろう。
後半の、ゲーリバ (gate reverb) ばりばりの、これまた80年代らしいドラム・ワークも、シンプルながらめりはりの効いたかっこいいプレイでとても良い。

実にイギリス曲らしいところだが、曲の頭から終わりまでずっと同じ通低音が鳴りつづける、このえんえんルート保持がまたたまらねえ。

あと止めを刺すのが、なんとも切なくやばい歌詞世界。僕は当時は、この一方的な Mama への愛を暗く歪んだポップ音空間の上で表現したところにインセスト・タブーを感じていたのだが、調べてみたらThe song's theme involves a young man's longing for a particular prostitute.なんだって。

This is about a young man obsessed with a prostitute who is not interested in him. He has an Oedipal fixation on her, and insists on calling her "Mama." It's based on a book Collins read called The Moon's A Balloon, by David Niven. In the book, a young man falls inlove with an older prostitute who does not return his affections.
When Collins played this for their manager, he thought it was about abortion, as if the narrator was the voice of the fetus pleading withthe pregnant woman.

しかしこう、歪んだ・狂った愛のパトスが折れてはじけていく系の歌は

実に切なく痛くていいですなあ。

Pogo the Clown / Hubert Kah といい、

Moaner / Underworld といい。ツボを直撃される。僕は別に恋愛で歪んだり狂ったところはないと思うのだけれど。

つづいて That's All は、ちょっとヒットしたけど、

よく悪くもフィル・コリンズな、スーパーマーケットの特価コーナーのBGMに良さそうな

(ヒドイ)ポップ・ソング。はいそうですか。

その次の Home By The Sea, さらに続けて Second Home By The Sea が、

プログレ調ポップというか、組曲感もあり、

いまあらためて聴くとコイツもずっと root 音がキープされてたりしていいですね。

Simmons SDSシリーズのベタなドラムシーケンスも、

こういうひとたちが鳴らすなら許せる。J-POPで鳴ってたら死ね。って感じ。

さてアルバムのほかの曲は、24年前もろくに聴いてないし、

いまも買ったけどほとんど聴いてない。埋め草。そんな感じ。ごめん。