Mac OS X に標準添付の開発環境、に含まれているQuartz Composer の解説書。
著者は未来派図画工作の中のひと鹿野氏。おそらく日本でのQC第一人者。というかほかにいるのかな。
Quartz Composer Book ?クォーツ コンポーザー ブック?
- 作者: 鹿野護
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2008/09/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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アンドレ・ブルトン、マクルーハンといったひとびとの言葉を引用しつつ、チュートリアル的にQCでどんなものが作れるかを解説していく、とてもきれいな本。ちょっと高いかもしれないけど満足。むしろ安っちい装丁のQC本など出たらそれはアートに対する冒涜だ。
内容は、僕にとってはそう新しい知見はなかった。というか僕は未来派図画工作の作品を解析してQuartz Composer に何ができるのかしらべて覚えていったので。
でも保存すべき記念品として一冊は所有すべき。
Quartz は, OS X の中でうごめく、グラフィックスの高機能処理レイヤ。その仕組みを GUI であらわにし、いじれるようにしたものがQuartz Composer.
たとえば静止画、動画、音声、MIDI, RSS といった入力を、画像フィルタや動画フィルタ、演算モジュール、JavaScriptモジュールなどいろんな処理要素でGUIでつなぎ、リアルタイム処理できる。Yahoo Pipesみたいな感じで編集といえばわかりやすいだろうか。
そしてそれをスクリーンセーバにできる。あるいはiTunesのエフェクトに。あるいはDVストリームに落としてビデオのノンリニア編集に立ち上げて。あるいはクラブでライブパフォーマンスで映写して。
Quartz Composer 以前、1990年代前半ぐらいに、Silicon Graphics Inc. のグラフィック・ワークステーションで、僕はこういう3DCGのビジュアルプログラミング環境に出会ってはいる。
目の前で、フローチャートのごとく処理要素をGUIでならべて、マウスで処理の流れをつないで、というインタフェースなんて、生まれてはじめて見るもので、尻から鼻血がでるぐらい興奮したが、とはいえ数千万以上ハードに積まないとまともに動かない代物だった。
ちなみに当時の僕の愛機 SGI IRIS Indigo XS24 は、R3000 33MHz で 16MB だった。それでも割と上位機種だったので 24bit フレームバッファだったんだよ。ハードウェアのテクスチャマッピング支援は無かったので、カラーマップを貼付けるとほとんど固まってしまっていたが。
でもいまや、近くのヤマダ電気で何かマックを買ってくれば、当時米国国防総省にSGIが納品していたクラスの3DCG表現環境が手にはいるわけだ。
本書はおそらくQuartz Composerに関して日本語で書かれた唯一の本だろう。
で、自分勝手をいうと、あまりもうこういう本は増えてほしくない。
Quartz Composerというすばらしいものがあまり広がってしまうと悔しいからだ。
森の中で魔法の石を見つけたことを独りじめしたい、蜘蛛の糸にぶらさがるのはオレだけだ!という、僕の心の非常な狭さである。
最近は、僕の飛び道具は、シンセや音符やエフェクタや作曲やDAWよりも、むしろQuartz Composerだったりする。
というわけで、音や画像、動画、アート、3DCGに興味のあるかたはぜひ一見の価値あり。QCを知らないと、一刻一刻、人生を損しますよ。