東京 電車のある風景 今昔(1) / 吉川 文夫

たとえば渋谷駅など、おもに昭和30〜40年代の東京の風景と、いま現在の東京の風景を、なるべく同じアングルで撮影した趣向の本。
「えー、あそこってこうだったの?」
「あー、たしかにああなってたよな〜」
と言いながら楽しめばよろしい。

ぼくは6歳、昭和48年にはもう毎朝都心への通勤通学ラッシュが人生の一部だったので、ぎりぎり同時代人といえないこともなく、てなわけで見覚えのある街の姿もそこかしこにある。さすがに都電は後にも先にも荒川線しか見たことないけど。

この手の本にしては、へんな現状批判などもなく、あっさりめだがそれはそれでよろしい。
都電のなくなった街路のうえを首都高速が暗くのしかかる、けしからん、自動車文明が憎い。みたいな本もよくみかけるのだが、鉄道と同じく高速道路も、電車と同じく自動車も、同じくおもしろい軌道であり乗り物なのだから、同様に論評して愛してほしい。
首都高箱崎ジャンクションの、湾岸方面への抜けが片方しかなかった頃と、現在の両方ある模様を撮りくらべるとか、風情があっていいとおもうのだが。