Exit / Tangerine Dream

タンジェリン・ドリーム 1981 年の作品。名盤… というにはちょっとなんというかオーラに欠けるが、名作、好作品、良作としてなら堂々とおすすめできる。

なんというか「テクノ・ポップ」に近い。といっても歌モノは当然なくて、軽快、はたまた緊張感あるシンセサイザー・ミュージックである。全6曲で、そう長い曲もないし、テレビのニュース番組の BGM としてもときたま使われる作品も多い。(実際 Network 24 は US の TV ニュース番組からとったとか聞いたような)

Exit

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あと何と言ってもシンセの音が良い。まだ当時試作段階にあった PPG Wave 2.2がふんだんに使われている。ROM に収められた各種 PCM 波形を VCF, VCA でいじくるという、デジタルの心臓をもったアナログ風シンセサイザーとして、ローランドの LA 音源とかの祖先にあたるものだ。(実際外付けの処理装置とか 8インチフロッピードライブをつければサンプリング・キーボードとしても使えたはず)

解像度は8ビットなのだが、この、ざりざりするような、「電気の息吹き」が聴く者の魂をわしづかみにするような、PPG はそんなすばらしい「男のシンセサイザー」だ。
残念ながら PPG Wave 2.2 を直接さわることができたのは20年以上まえ、ほんの十数分でしかなかったのだが、なんというか、その鉄板というか、インジケーターも、ツマミをまわしたかすかにシャリシャリした感触も、鍵盤を弾いたときにほのかに感じるチキッとしたクリック感も、こりゃもう全然違うんですよ。ぼくも当時はさんざんいろんなシンセに触りまくっていたが、あぁこりゃもう全然ちがうなと。たとえば BMW の6発エンジン。あの、重厚かつ精密に設計製造された金属製品が内燃機関として擦動し活動し制御され制御していく、あの心が震えるような悦楽感、あれと同じ何かがある (と、いま気づいた)。クルマもシンセサイザーも、人の官能に訴える精密機械を作るなら、ドイッチェラント・ユーバー・アレス、ゲルマン民族の作るもの以外はすべてクズである!

とかまぁあまり関係ないことを書いたが、このすばらしい PPG の音世界がこのアルバムでは十二分に展開されている。iTunes Music Store にも置いてあったのでこころゆくまで試聴してほしい。ちなみに、このころ多用されている、いまいちリアルなのかチープなのかわからないドラムマシンはOberheim の DMX である。(当然これも 8bit サンプリング)

ちなみに個人的にはこの後期のジャケットはださくて嫌い。