おなじ名字のBXのひと

昨日はさらにシトロエンC5の調子が悪くなり、直進・左折・右折・徐行・停止・発進すべてに難儀するしまつ。何かのたびにエンジンが止まる。ハンドルも止まる。ブレーキも利かない。交通を妨げる。爆音を立てる。運転士のメンタル状態は、一輪車に乗れるようになった直後のテンパリに近い。プラス、ぎりぎりの下痢ぐらい。

夜中に奥さんを勤務先に迎えにいったときは、到着直後は最悪の精神状態で、
「俺から半径5m以内に近づいた奴は全員殺す!」
というぐらいのダークブラックソウルであったが、にこやかに仕事場から出てきた奥さんは、同じくにこにこした、人当たり良く優しそうなハンサムおじさんを連れて出てきた。福祉関連の事務所なので、good at heartなひとたちばっかりなのだ。

だが… ブラックホールの核よりも暗く重く凝固したいまの俺の気分…
運転席から顔を出して
「やぁこんばんは! 家内がいつもお世話になっております!!」
みたいなソーシャルナイスな応対は今の俺には無理だ。

すまない… 初対面なのに… あなたに悪意はないんだ… でもいま俺はちょっと、人に気持ちよく挨拶できる状態ではないんだ… ほんとにゴメン…

「… こ、 こんばんは…」
「こんばんは。奥さまから伺いました(笑) 大変ですね、C5ですか。僕はBXです」

そのかたはシトロエンBX乗りだった。
にこにこと、ATとインジェクション満身創痍の19TZIで渋滞する横浜市内のアップダウンを死ぬ気でクリアしたお話などしてくれた。
僕の気持ちは、モーゼに手を差し伸べられた紅海のように、奇跡をもって歓びの涙で大きく開かれた。
あとは軽く、世間のXantiaの昨今の前部ストラット突き抜け事案についてお話して、その場をお別れした。

あのときの僕にとって、10万人にひとりの確率で、初対面で前向きに話せるネタとキャラのかたとの邂逅。
とりあえず今年いちばんおもしろかったことの現状ベスト。
そういえば名字もおなじ森本さんでした! 

BOLTS AND NUTS! vol.5―自動車エンスー大河ロマン 計画発動 (NEKO MOOK 59)

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