DAVID BYRNE'S AMERICAN UTOPIA

2024/2/17の渋谷シネクイントでのスタンディング上映で観ました。 同日同館でのSTOP MAKING SENSE 4Kレストア スタンディング上映からのデヴィット・バーン2連続です。STOP MAKING SENSEはこの週みるのが2回めだったので週3 David Byrneです。

大変に素晴らしいものでした。 この映画はコロナ前夜あたりから知ってはいましたが、デヴィット・バーンというと、良くも悪くも孤高の偏屈さんというか、あと社会的視点が強め、タイトルが「アメリカン・ユートピア」でアイロニー感が満点、さらにUTOPIAが上下ひっくり返っててシニシズムがテンパイ確定、でもって監督がスパイク・リーというと、

「環境に政治に人種差別に、世界はこんなに大変なんだ! わかったかお前ら!」
「ハイ……」

みたいな説教臭いものという先入観が生まれてしまい、敬遠で見送っていました。

とんでもなかったです。むしろ説教臭いものはよくないよね、という価値観がイントロのデヴィット・バーンとスパイク・リーのトークで明快になり、12人の演奏家によるミュージカルとパフォーマンスとダンスとライブがシンプルに美しく融合した2時間をつくづく堪能しました。 常に新しいものを学び続け、自分もアップデートしつづけるアーティスト・ミュージシャン・表現者による、ウィットとユーモアに富んだエンターテイメントの提示でした。すばらしかった。ポスターにある「批評家絶賛!」「一生に一度の、至福の体験!」は、まさにそのとおりでした。Once in a Lifetime.

  • 内省的・神経症的なテーマを、シニカルを捨てず、でも愛に昇華させて取り上げる歌詞のすごさ
  • 永遠の中二でありつつ、ユーモアと敬意と自らの価値観のアップデートもしていく誠実さのすごさ
  • ダンス・セット・アイディア・センスのすごさ
  • すべて無線でやっていると思われるのに、音質やズレや不調などまったくないPAのすごさ
  • 愛とダイバーシティのすごさ
  • 70近いのに歌もアイディアも新しいことに取り組む探究力と表現力のすごさ
  • 裸足のすごさ

観終わって1日、まだまだ素晴らしさを言語化しきれない。
音楽や映画は各個人の好みのものであり、押し付けたりするものではないが、誰しも一度は見てみてほしいなと思いました。

もうスタンディング上映はないけど、明日またお代わりいくつもり。

STOP MAKING SENSE / Talking Heads

ご存知、Talking Headsのライブパフォーマンス映画STOP MAKING SENSEは、むかーし画質や環境の良くない状態で見て (バーかどこかで? 忘れた)、ふーんなるほど程度の認識しかなかったのだが、 このたび4Kにリストアされ、IMAX上映もあるということを知り、時間を作って久しぶりに改めて鑑賞 (2024/2/12 19:20 ユナイテッド・シネマ浦和)

うわー。よかったー。
きちんと鑑賞し直してよかった。 シンプル、アイディア、センス、ロック、ファンク。

Talking Headsは、特にファンというほどでもないのだが、ちゃんと音楽を聴き始めたのが1980年ごろの僕にとってはまさに青春の同時代で、曲というものを作り始めた16歳のころの楽曲に、いま思うとBorn Under Punchesのリフからの借用があったりと、嬉し恥ずかしだ。Same as it ever was and look where my hand was. あとそういえば、いままで聴いたベストアルバム9枚を考えたとき、 My Life in a Bush of Ghosts / Brian Eno + David Byrneが入った。

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欠点といえば、普通に映画館の座席に座って観るしかない状況だと、Burning down the House, Once in a lifetime, Crosseyed and painless あたり、もう立って踊らないのがどうかしてる、椅子に座ってることが苦痛だった。 どっかで騒ぎ放題上映されないかなあ。

と、思っていたら、2024/2/17中心にスタンディング上映を各地でやることに!! 行かないわけがない。H3ロケット第2回発射が成功した2/17の渋谷シネクイントのスタンディング上映におかわり行きました。いやもう最高かよ。 ヴォーカルが電気スタンドで遊びだすと客席全員から歓声が上がるという体験は他にないだろう。

バーン先生の楽曲は、オクターブ上下なヴォーカルメロディラインが多いなとも、44年経って改めて思いました。

スクリーンが待っている / 西川 美和

「すばらしき世界」の制作にまつわる話を中心としたエッセイ。
よかった。
穏やかで読みやすく、しかし各所にあらわれる表現のたおやかさ。
誠実で感受性ありながら、自分は映画ものがたり造り渡世をひとり進んでゆくのだというboldな心意気。

映画にまつわるXについて / 西川 美和

西川美和監督のエッセイ。

僕は西川監督の映画がかなり大好きなので、こんないい台詞や画がどうやって生まれてくるのか、どんな人から生まれてくるのか、とても興味がある。 随筆を楽しむような時間や心の余裕を数年ぶりに取り戻したので、kindleで購入し、二晩ほどかけて寝しなに愉しんだ。

「カエルとダザイ」を読んで、 日本の少年少女の一部が通過するダザイは、 欧米の少年少女の一部が通過するJoy Divisionかな、って思いました。 なんの脈絡もないけど。

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ザ・キラー

ほっておけばNetflixで観られる一本だが、一週間だけロードショーされているので映画館に行って観た。


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デヴィッド・フィンチャーらしい硬質な画と、感覚的な進行。
劇伴はいつものトレント・レズナーとアッティカス・ロスのコンビで鉄板の不気味さ。この音を映画館で味わえたのもよい。

何かというと主人公がThe Smithsを聴くのは、レオンの主人公が観葉植物大事にしてるのとちょっと似てるね。

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ザ・クリエイター/創造者

猥雑清潔なアジア風スティームパンクSFの美しめの画を大画面でたっぷり楽しめる。この映画は良くも悪くもそんだけでいいと思う。ストーリーなんてあってなきがごとし。
ジョン・デヴィッド・ワシントンも渡辺 謙も、この手の画にお約束のパーツとして良い感じにはまっている。

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

トム・クルーズ主演の、ミッション・インポッシブルの新作。であった。

ほぼ3時間アクションとサスペンスてんこ盛りだが、さすがにみんな歳を取ってきて渋めの絵にもなってきてるので、ケレン味で胃もたれするようなこともない。幕の内弁当の大を注文したら、まさに幕の内弁当の大がやってきて、でも案外すっきり食べられたという食感。ストーリーにも音楽にもアクションにも特に新味はない。そういう意味でも普通に売っている幕の内弁当の大。

3時間延々と観おわって、えー、いいところで終わっちゃったぁ!! Part Twoまだかなまだかなー とカタルシスが貯まるようだったら嫌だなと思ったけど、その心配はほぼないので安心して鑑賞していただきたい。だって、これは幕の内弁当(大)なので。

「こっ、これが幕の内弁当か!」
「食べおわっちゃった! 幕の内弁当、これからさらにどうなるの?」
「来年に次の幕の内弁当をまた食べられるみたい! どんな味なんだろう? ああぁ待ちどおしい…」

なんてならないよね。