相当にすごく良かった。とりあえず好きな映画ベスト15〜20ぐらいに入った。
異常心理犯罪者が生まれるまで。の話であって、舞台はバットマン誕生前夜のゴッサムシティだが、バットマンに関する情報はそれほど必須ではない。逆に、いないとは思うけど、バットマンが丁々発止で活躍する映画だと勘違いして観てしまった人は1ミリも報われない。
なんといっても主演のホアキン・フェニックスが、ただただ素晴らしい。哀しい狂気を見事に演じきっていて一切ブレがない。あと煙草を喫う仕草と音がじつに美味そう。
映像も素晴らしい。物語は1970〜80年代ぐらいのアメリカ(つまりゴッサムシティ。シカゴっぽい感じ)であり、風景や小道具大遠具も一切ぬかりがない。(一瞬E30のBMW 3が出てきたのが残念)
そして色彩設計やタイトルフォントあたりも実にその次代の淡く洒落た雰囲気そのもの。たとえばブリットやタクシー・ドライバーを彷彿とさせるような。そういえばデ・ニーロも出ています。なんとなしにフィルムっぽい、銀塩っぽいグレイン感もある。ノーランみたいにフィルムで撮っちゃいないと思うけど。しかしその色味は終盤に向けて徐々に現代風に少しずつ彩度があがり、ラストシーンでまた戻る。
音楽も実にいい。重く切ないオーケストラのレンダリングに加え、時代感のあるナンバーが絶妙に使われている。ある核心人物を殺害したあとパトカーで去るジョーカーにCreamのWhite Roomがかぶるところなど、これ以上ないほどキマっている。このシーンの造りやジョーカーの表情は、ダークナイトのヒース・レジャーへのオマージュかな?
映画『ジョーカー』本予告【HD】2019年10月4日(金)公開
重いストーリーだしスッキリする映画でもないが、メジャーなロードショーに流れる作品だけあって、一本の娯楽作品としてのまとまり感も締まっている。ミヒャエル・ハネケやラース・フォン・トリアー作品のように、ううううんと喉に引っかかる余韻を味わう作りではない。
この映画は映画館で鑑賞したほうがいい。音楽も素晴らしいし、色彩とフィルムっぽさ、音楽と音響は映画館でこそ楽しめる。あと、映画館で鑑賞する観客に向けた、ある仕込みが入ってるんじゃないかと思っています。