そこいくと、今回見ることはできなかったものの、ガックリきたのが、moogの新製品Little Phatty. まさにあのminimoogの再来のようなスペック、デザインで登場したアナログモノシンセだ。
こ、これは… と思いつつ写真をよく見ると、VCO, VCFなどの各セクションにつきひとつずつしかツマミがないじゃないですか。
つまり、VCFのカットオフをいじりたいなら、はいカットオフを編集しますとカットオフボタンを押してからツマミをひねり、レゾナンスをいじりたいなら、はいレゾナンスを編集しますとレゾナンスボタンを押してからツマミをひねり、というていたらくだ。
これはどう考えてもひどいと思うのだがどうだろう。
キーボードやシンセ、いろんな商品があると思うし、こういう仕様で全然okなものもいっぱいあると思うけど、moogのコレは、絶対そうではないはず。CUTOFFツマミとRESONANCEツマミは、スポーツカーでいえばクラッチとアクセルと同じであって、ココだ! というところで「両足」と手を感性のおもむくままに動かし、官能的な喜びを得るためのものだ。「このクルマは手元のボタンで、ペダルの機能をアクセルかクラッチに切り替えられます」という代物をロータスやアルファが出してきたらどうだろうか。峠のガードレールから下に捨てるしかないだろう。そしてこのシンセは、まさに名門中の名門による、プロと愛好家のための、クラッチとアクセルとシフトワークがびしっとキマる感動の一瞬、まさにそのためにあるものであるべきだ。
これでは天国のボブ・ムーグ博士も浮かばれないのでは、いまごろお墓のフタが無念でサンプル・アンド・ホールドしているのではないかと気がかりだ。