一言でいうと「アメリカ版座頭市」。 ツッコミどころはいろいろあれど、良好なB級映画。Amazonビデオのレンタルで視聴。
ベトナム戦争で負傷し視力を失ってしまった主人公。地元のひとびとに助けられ(え?)、リハビリを通して剣の技を身につける。
米国帰還後、杖を片手に放浪しつつ、戦友の家を訪れる。この戦友、実は戦場で主人公を置いて先に逃げてしまった男でもあり、主人公の失明の遠因でもあるのだ。でもそんなことは心の奥に秘め、控えめな陽気さで飄々とふるまう。この「飄々と」の過程で、主人公の、盲目ならではの発達した聴覚や、間合いを感じ取る能力がじわじわと伏線で示されるのですね。
しかしその戦友宅には彼はおらず、いたのは息子と別れた妻。戦友はギャンブルにのめり込み、家族に愛想を尽かされ、おまけに借金のカタにギャングの片棒を担がされていた。そんなところに現れたギャングの用心棒たち。脅迫、乱暴、果てには戦友の元妻を撃って致命傷を与えてしまう。
「おい、余所者はそこをどけ」
「お前さんたち、乱暴はいけないよ……」
一閃する仕込み杖。
……という感じで、実にアメリカ映画でありながら、すこぶる座頭市感ある。「わるいやつ」に対し、じっと我慢からの剣術成敗。というカタルシスはまさにそれだ。座頭市モノにありがちな賭場のインチキを見破るプロットも、ラスベガスのルーレットに置き換えて載せられている。この映画、勝新太郎の事務所に許諾を取って制作されたそうで、傍流ながら座頭市の作品の歴史の中にきちんと入っている一作だ。
戦友の息子と一緒に、戦友が囚われているラスベガスへ向かうロードムービーでもあり、しだいに少年と主人公の「おじさん」の友情が培われていく流れもベタだが良い。そして、「目明きと銃」へ立ち向かっていく戦術も、たとえば身の丈以上もある広大なトウモロコシ畑でのゲリラ剣術などなど、いろいろおいしい。
主人公を演じるのはルトガー・ハウアー。もちろん「ブレードランナー」で一番強い敵役のレプリカント兄ちゃんを演っていたひとだ。
ぎりぎり、カルト手前ぐらいの良作B級映画。Amazonプライムの無料視聴対象ではなかったが、199円でこれが見れるなら、ドトールのアイスコーヒーよりも安い。おすすめだ。
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