ゲームストーミング / デイブ・グレイ, サニー・ブラウン(著)

世の中の「しごと」を、心の持ち方を軸に2つに大別してみると、

1. 単純労働: 工場のライン、刺身にたんぽぽ…とかね。変化は脅威! プロセスが大事。

2. 知的労働 (ナレッジワーク): 変化はチャンス! プロセスよりもゲームが大事。

後者の知的労働は、変化に対応していけるほうがいい。正解の無いゴールへと、助け合っていけるほうがいい。じゃあそれをどうやって実現していくか? ゲームを通して、チームビルディングや知的共同作業を一緒に体験していくのがいい。それがゲームストーミングだよ! という本。

ここでいうゲームとは、特別な共通の場を作ること。
amazon.co.jpの書籍紹介から引用。

ゲームストーミングはゲームのアリゴリズムと視覚的効果および効用を利用してグループワークを促進させる手法・技術・行為の総称です。ブレインストーミング、ファシリテーション手法、アイスブレイキングといったテクニックと同様、ゲームストーミングも会議、セミナー、ワークショップなど協働において優れた効果を発揮します。本書では、プロジェクト内での意思疎通、業務の簡素化、目標や日程の設定、アイデアの創出、具体的な計画の立案といった作業やプロセスを改良・改善するためのアナログゲームを80種類以上紹介しながら、ゲームストーミングの実践方法を明らかにします。日本語版では特別付録として野村恭彦氏による「フューチャーセンターでのゲームストーミング活用事例」を収録。
2章〜3章をきちんと身に付ければ、実際にゲームを設計することができそう。
ただ、ここの内容はとても濃い。明快な文章で書かれているだけあって、無駄なく内容が詰まっている。落ち着ける時間をしっかり取って読まないと、目から脳から、どんどんエッセンスがこぼれ落ちてしまってもったいない。
4章以降は、具体的なゲームのレシピ。よくできたソフトウェア・パッケージ群のリストを見たような気持ちだ。
古くから使われているものもしっかり含まれている。あれ、これってKJ法っぽいな… と思ったら、「これは日本では古くからKJ法として知られている方法で、川喜田二郎教授が考案したもの」とか、「このゲームの原案はトヨタの創業者 豊田佐吉の発想です」といった記述にも出会う。

実際に使えそうだなと思ったものを抜粋すると:

  • Cover Story (未来像を雑誌や新聞の見出しで表現する)
  • 3-12-3 Brainstorm アイディアを出す. 3, 12, 3という時間配分がコツ)
  • Image-ination (写真カードを使ったアイディア出し)
  • Low-Tech Social Network (紙とペンで無理やり全員のfacebookみたいなソーシャルグラフを書いてみる)
  • Pre-Mortem (プロジェクトが大失敗する経緯を予見する)
  • Spectrum Mapping (多様な見解を並べて一覧化)
  • Synesthesia (五感を意識したアイディア創出)

知的労働において育成やマネジメントにかかわる人なら、一冊手元にあって損はない本だろう。

追記: この記事も示唆を含んでいて面白い。