クルマでも計算機でも音楽でも、独自でアレゲなアーキテクチャなものが好きだ。
当然、ヒコーキだと、試作機とか、枢軸国の敗戦前夜のヤケクソ設計とか改造とか増設されたものがいい。時間が足りず涙を飲んで実戦参加に間に合わなかった!という結末になっているとさらにいい。
(やばい、いま気づいたが潜在的なデスマーチ指向があるのかも)
わたしは高校の一時期、それなりに気合いの入った飛行機モデラーで、そういう困ったインジェクション・キットとかバキュームフォーム (ポンセンベイ) とかレジン・キットが部屋の押し入れに英独語の資料と一緒にかなり積み上がっていたのだが、いまでもたまにそういう写真をみると、うずく。
偶然別件で探し物をしていたら、実に困ったものをみつけた。このヒコーキは知らなかった。Sikorsky XV-2 (XH-36)
もう見れば説明の必要はない。尾翼いっさいなしで、一本ローターを背負ったデルタ翼のVTOL機。ヘリコプターのように垂直離着陸し、高度と速度が乗ったら仕込み刀を背中にしまい、すいーっとマッハまで! という代物だこれは。だいたい、翼片方だけの一本ローターなんて見たことないよ。
さすがにこれは実機建造にいたらず、設計しているうちに朝鮮戦争がはじまり、シコルスキーもヘリコプター作るのに忙しいうちに話が流れてしまったようだが、まあこんな機体の1/72のレジンキットがあるのさ、というだけの話とおもったら、こいつを執念でビルドした凄いモデラーがロシアにいて。
このレジンキット、素でつくれば「Big-1フーセンガム」レベルのシロモノなのだが、Aleksandr Nevzorovというひとの執念の作り込みをみてほしい。これはすごい。ついに実機は造られなかったので、ディティールはあらゆる妄想だが、説得力に満ちあふれている。実にすばらしい。
さらに撮影もすばらしく、ぼけっと見ていると、説明文はロシア語で読めないし、色味の調整やボケぐあいも巧みで、実際の写真だと思ってしまう。
とくにこの脚を出したままのフライバイ試験っぽい写真とか、さらに泣かせるのがローターでの垂直離陸の夜間の軌跡写真っぽいやつ。下のキャプションとか、NASAのロゴとか、入魂の職人すぎる。Dryden Flight Reserch Center ですよ?どんだけ飛行機マニアのツボを押さえてるんだと。しかもロシア人なのに。ロシア人ならツシノ飛行場でのE266のタキシング風景でもつくっとけと。
このすばらしい写真、どうにも記憶の琴線にひっかかるので、探してみたところ、元ネタの写真ありました。というかTinEye Reverse Image Searchすごいじゃん。俺もすごいけど。
この手のマイナー系VTOL試作機は西ドイツにもけっこうあって、EWR VJ 101とかVFW VAK 191Bもかなりいい感じ。
と思ったら、F-104のVTOL案というのがあったんですね。
これは、もう、写真みて呆れてください。これは、ないw