これはややこしい! 時間の流れというものを、メメント、インセプション、ダンケルクと、お話と映画でどう扱うか追っかけてきたノーラン監督の最新作。
時間の逆行がテーマなのは周知だと思うので、ネタバレまで行かないと思うが、普通のモノと●●なモノ、普通の人と●●な人が入り混じっているので、映像がすごい。深く考えるといろいろヘンだけど、これは新感覚の映像体験を創り体験するための脚本と設定のアイディアだ。こんな戦闘シーンは確かに観たことがない。この技術を楽器に応用すれば、リバースシンバルとかをリアルタイムでライブ演奏できるね!
それに関連して、ある状況下の人間はマスクを掛けてないといけないという設定があるので、●●な●●は正体がよくわからず、なので物語の多重構造、絶えず発生しているどんでん返しの伏線を適切に伏せておくことができる。ひょっとするとコロナ状況下での撮影制作にも有利だったかもしれない。
とにかく伏線と時間と人物の流れが非常にややこしく、無粋な説明セリフや狂言回しの類もないので、話がややこしい。一回観ただけなのでまだ分からないことが多い。プログラムのデバッグ用のログの解析とか、スタックトレースのログを追うのに似た気分も感じる。 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「アポカリプト」が一本道進行に徹する新しい映画の形を提示したとするなら、これはむしろ間逆で、一発じゃ分んないから何回でも観ろという、客にリピートしてもらうことを前提に創っているかもしれない。ビジネスとしても、苦しい映画産業への斬新な収益モデルの一石を投じているのかもしれない。
主役はデンゼル・ワシントンの息子さん。もうちょっと主人公のオーラがあるとよかったかなぁ。画はもちろんいちいち全部きれい。良いものを目で鑑賞しているという満足感がずっとある。音楽はちょっと毛色が変わったなと思ったらハンス・ジマーじゃないみたい。