ユナイテッド93

huluで視聴。相当に良かった。

米国同時多発テロ、いわゆる9/11事件では、4機の旅客機がハイジャックされた。
映画のタイトルになっているUnited 93は、ハイジャックされた4機のうち唯一「目標」に達して突っ込むことなく途中で墜落した飛行機で、登場していた旅客がテロリストに機内で立ち向かい、テロ達成未遂に終わらせたのではないかと言われているものだ。
この映画は、そのユナイテッド93便の、離陸ちょい前ぐらいから墜落の瞬間までを、なるべく忠実に追ったノンフィクション映画。

大変に淡々としている。余計な映画音楽も入らないし、いわゆる有名俳優も出てこない。アメリカの、日常の、朝の空港の風景、乗客たち、管制官たちの淡々とした様子から入ってくる。

これがもう、淡々としているだけに、恐ろしい。事実の持つ重みがじわじわ伝わってきてたまらない。多少の離陸遅れトラブルはあったものの、飛行機は朝の混んだ空港から飛び立っていく。この全員が助からない。このあと全員が死ぬんだと観客は知っている。だから怖さが半端ない。

この映画、画の自然さが半端ない。余計な音楽や演出が一切ないことに加え、すべてが手持ちカメラで、自然にブレている。といって不快な見心地というのではなく、とても自然だ。
あれっと思って監督をみたらポール・グリーングラスだった。ボーン・アイデンディティなどボーン・シリーズのカメラの自然さ(と、カット割りの細かさ)は実に素晴らしく、どれも10回ぐらいは見てしまっている。特段の音響や効果に頼るのではなく、じわじわ、じわじわと盛り上がり、緊迫していく。これは、1カットずつじっくりと見返して鑑賞もしてみたい一本だ。

加えて素晴らしいのが、テロリストの4名がとことんビビっていることだ。冷静沈着な悪の権化とは程遠い。明らかにビビり、慌て、落ち着こうとし、手が震え、顔もシャツも汗をかき、泣きそうである。切ない。大変切ない。せつないからこそ、何だって一体お前らこんなことするんだよ… という切なさと無常さが、最後の最後の、陸地がコクピット正面に迫る直前まで、続く。

これは、淡々と重い、かなりの名作だ。淡々と向き合って鑑賞していただきたい。