古典「SF映画」の金字塔。「ER」とか「ジュラシック・パーク」の作者マイケル・クライトンの出世作。原作の小説は「アンドロメダ病原体 (Andromeda Strain)」だが、映画の題名は「アンドロメダ…」(あんどろめだ 三点リーダ)
落下した人工衛星に付着していた、宇宙から持ち込まれた謎の病原体に対する、科学者たちの調査と対策の5日間を追うドキュメンタリー。の形式をとった小説。小説も、この映画も、徹底的に地味でリアルなんです。
小説のほうは、30年まえに早川書房の単行本を持っていたが、60年代っぽく作られたコンピュータのプリントアウトの挿入など、当時すでに古い手ではあったけれど、微妙なロストフューチャー感もあいまって、とても良いものだった。http://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ病原体より:
小説全体が「科学的な危機を正確かつ客観的に記録した報告書」という体裁で成り立っており、学術的あるいは理論的な世界観、国家的危機の際に発動される政治・軍事プログラムの厳格性を全面に出し、架空の科学理論(宇宙線の影響下での、成層圏での、驚異的な生命進化など)/写真/図(電算機出力のダイアグラムや軍事通信フォーマット)などの具体的資料を用いている。
英語版の初版では、通常の書籍スタイルでの出版ではなく、レポートをバインダーでとじる形での装丁がなされていた。これは、本作が、政府の秘密レポートという様式で記述されており、その記述スタイルにリアリティを与えるための演出であった。しかしながら、この装丁はコストがかかることから、日本語版ではこのスタイルでの商業出版物は存在しない。
映画の「アンドロメダ…」は、かなりこの雰囲気を忠実に再現している。
原作では5人の科学者は全員男だが、映画では一人だけ女性に代わっている。でもご心配なく。ブロンドの美麗なヒロイン… ではなく、眼鏡をかけた太りぎみのスモーカーのおばさんである。人種的配慮に基づいた、黒人やアジア人やアラブ人への差し替えもない。古き善き時代ばんざい!
音楽はギル・メレ。ジャズ畑のひとだが、この映画ではベタベタに「電子的な実験音楽」というやつをやっている。電子音楽! 実験音楽! 電気回路で音を出すなんて! ということにまだセンス・オブ・ワンダーがあった1970年代の空気そのままに、ぴゅー、ぴこぴこ、しゅーー。であり、それがまたクラシックなSF映画の味わいによく合っている。
ストーリーは、事故発生から、緊急事態フローに則って科学者たちが集められ、政府の極秘施設に集合し、研究調査し… という流れを淡々と追うもの。施設に入ってから何度も何度も滅菌手続きを経過する様子を延々と追ったり、ドキュメンタリー味が半端無い。「プロジェクトX」とか、あるいは大規模障害の報告書を目で追っているような地味さだ。
ヒーローやヒロインや宇宙人やアクションを期待する向きには全く向かない作品だが、そういうウェル・メイド・プレイに飽き飽きしている人には、相手を選んで必見中の必見だとお伝えしたい。