Chromeの語感

けさ出たGoogle Chromeですが、Mozillaのユーザ・インタフェースの機構とか、Microsoftの昔の革新的UI構想とか、Chromeって名前のついたもの多いですよね。

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クロームというと、キラキラした銀色の金属です。
むかしのアメ車とか、クロムのモールがいっぱいついてテカテカしたのがいっぱいありましたよね。

アメリカの自動車産業は、そうやって、色や見た目や飾り付けだけどんどん変えて、どんどん新型とか別ブランドとか、名前や年式だけ違う新型車をいっぱい市場にだして、購買意欲をそそるというマーケティング手法の口火を切りました。米国のクルマ産業が下火になってきたいまでもそのやり方は健在で、たとえば2008年になったばかりの正月すぎに、グリルのデザインを変えただけの 'All New! Toyota Corolla 2009 model' とか平気で出てきたりします。

ただそんなやり方は、業界内部の人間からも「俺たちちょっとナニだよね」という意識はあったようで、そのせいなのか、そういう「見た目だけお気楽にいじった新型車・新製品」のことを、いつしか 'Chrome' というようになりました。表面のメッキ部品をとりかえたに過ぎない商品だよ、ということですね。「ああ、うちの新型車も全部 chromeだからなあ(笑)」というふうに、やや自虐的に使われていたようです。

ハッカー文化にもこの用法は伝わっていたようです。ちょっと見た目をいじっただけのプロダクトや、格好ばかりで大げさなGUIのたぐいをchromeよばわりして蔑む感じです。

Mozillaのスキンとかユーザ・インタフェースの定義言語XULまわりもchromeと呼ばれます。ただこれは自ら名乗っているわけで、蔑むというよりは、ハッカー文化・UNIX文化に昔からある、ちょっと斜めにひねった自虐ユーモアが含まれているのかなと私は思います。たとえばこんな:

  • gawk (GNU awk) = gawk (使えない奴、のろま)
  • gosh (Scheme互換インタプリタGaucheのshell) = gosh (うへぇ、マジかよ)

Microsoft Chrome (どこいっちゃったんだろうな...) もそうだったのかなと思います。

Google Chromeにその語感が含まれているかちょっとわかりませんが、今回再実装された高性能JavaScript engineが 'V8' って名前なので、やっぱアメ車文化をネタ的に意識してるかも、って気が僕のなかではほぼテンパイ確定です。