ブラック・コメディ・アニメのサウス・パークの脚本・演出・作画・音楽・声優すべてを手がけるトレイ・パーカーとマット・ストーンのコンビによる映画。かなりすごい。R-18指定。
サウスパークは切り絵ふうアニメだけど、チーム★アメリカ ワールドポリスは「サンダーバード」のような吊り人形特撮で作られている。背景やアクションなどすごく凝っているところもありつつ、気のぬけたへんてこな歩きとか、吊り糸まるだしのシーンとか、チャチなところはわざと徹底的にチャチに撮っていて、落差がおかしい。
内容は、世界の警察を任ずる米国を自らバカにし、各国やテロリストもバカにし、ハリウッドの数々の俳優や監督などもバカにするという徹頭徹尾ブラックなもの。
米国主義まる出しの「チーム★アメリカ」という正義の味方チームが、各種秘密兵器を駆使し、各国の住民や建造物はまったく気にせずテロリストを勝手に抹殺しまくるのだが、重要なメンバーに欠員が出たため、組織はブロードウェイの若き舞台俳優をリクルートする。
ナンパされる俳優ゲイリーが最初出ていたミュージカル「みんなAIDS」は、たぶん有名なミュージカル「Rent」をパロディにしていて、歌詞もきたなくくだらなくてとてもいい。チームの秘密(?)基地は、ラシュモア山の大統領の彫刻の裏に隠れているのだが、そこから飛び出すジェット機やヘリや潜水艦などバカなメカもたのしい。本部にいる人工知能コンピューターI.N.T.E.L.L.I.G.E.N.C.E.は、お前はいったい何の略なんだよ!マイケル・ムーアの自爆テロによって本部を破壊されたあとの、I repeat, we have no I.N.T.E.L.L.I.G.E.N.C.E.!!という無線連絡もおかしい。(だから吹き替えなんかじゃなくて、絶対原語というか字幕でみたほうがいい!!)
疑問を感じて組織を離れたゲイリーが、失意のうちに延々とゲロを吐くシーン(おそらく映画至上最長のゲロ!)は、やたら悲痛で豪華なオーケストラが何度も盛り上げて、腹がよじ切れるほどおかしい。きたないけど。マペットどうしの延々としたセックスシーンもグロくて汚い。
ハリウッドの各界著名人もさんざんコケにされていて、みんな無惨な死に方をする。ネタバレになってしまうのだけれど、結局ストーリーの後半は、大量破壊兵器を世界中で使って世界をめちゃくちゃにしようとする北朝鮮の金正日と、彼の手下になるハリウッドの「良識派」俳優たちの組合F.A.G.(Film Actors Guildの略らしいが、FAGって「オカマ野郎」って意味みたい)との戦いになるのだが、各界有名俳優が(勝手に)出まくり殺されまくり。トレイって、バーバラ・ストライザンドのことどんだけ嫌いなんだよ(サウス・パークでも、秘密の力を手に入れてメカゴジラのように巨大化して街を破壊するバーバラ・ストライザンドと、それを同じく巨大化して倒す、ザ・キュアーのロバート・スミス(!)というエピソードがあった)ジョージ・クルーニーは、サウスパークでもゲイの犬の声で出演してたりするのでなあなあの関係なんじゃないだろうか。マット・デイモンは「マット・デイモン」としかしゃべれない、サウスパークでいうとティミーみたいな知的障害者キャラになってて、ブチ切れだったようだ。
いちいち書いていくときりがないけど、エロ、グロ、ナンセンスが最大限に体現されていて、間然とするところがない。音楽もなかなかよくて、金正日が独裁者の寂しさを歌う「ボクはひとり」とか、あと主人公が訓練を受けて強くなるところにかかる「モンタージュ」もよい。トレイは「くっだらねー、わざとらしい音楽」にはいつもシンセ・タムを効果的に使っていて、それはサウスパークの名曲「素晴らしいチンチン者」でもそうだし、この映画でも、ほかに将軍様向けの舞踊の曲でもつかわれている。あと「パールハーバー」とマイケル・ベイをくそみそにこき下ろすバラードなども素晴らしい。例によってトレイ自身がいっぱい曲を書いている。
というわけで、これも実に素晴らしい一作だった。ただ結構きついので、誰かと見るならメンツを厳選して見よう。だてにR-18ではない感じ。