生きる LIVING

とても良かった。
フィルムを思わせるしっとりとした色、ボケ味とグレイン感、4:3なアスペクト。黒澤というよりむしろ小津っぽい味もあり、映画館で銀幕で観る良さたっぷり。

名優ビル・ナイをはじめいい役者ぞろい。とくに元部下の女の子の役者さんは原作の雰囲気すら想わせるキャスティング。 あの歌はあの歌ではありませんが、話の流れもかなり黒澤版に忠実で、しかし独自の味がしっかり染みてて素晴らしい。本心を押し隠しぎみな日本人の特性をテーマとした話は英国人にも載せやすいわけか。

とはいえ、思い返すと、原作のあのシーンも見たかったなぁというないものねだりもやはりあるなあ。

まず1つは、部下の女の子の転職先。やっぱり工場とかものづくりの仕事に就いたからこそ、物語の強いポイントとなる台詞「課長さんも何か作ってみたら?」がでるわけで。

そしてやっぱり、酒場の誕生日パーティーでHappy Birthday To You合唱のなか階段を駆け上がる若い女性、と入れ違いに「わしにも何かできる!」と酒場の階段を急ぎ降りる主人公、動きと構図の対照とともに彼の新たな人生の誕生を祝福する映画史屈指の名場面。