きょうは9月11日です。
9/11というと、2001/9/11にあの大事件が起き、情報を求める人々によるインターネットの輻輳でWebが死に、
しばらくして少しずつcnn.comやyahoo.comが復活し、
それは人類がAkamai (CDN) の威力を実感した日でもあり、そのAkamai CTOの命日でもありました。
毎年おもいだし、@yamazさんの記事を読み返します。
Akamai (アカマイ・テクノロジーズ) は、世界最大のCDN (コンテンツ・デリバリ・ネットワーク) の会社のひとつです。コンシューマの目に触れることはほぼありませんが、地球上のみんながどっからでもいろんなサイトをさくさく見れるようになっている技術とインフラに大きく寄与しています。
Akamaiの創業者のひとりでCTOだったDaniel Lewinは、同社のグローバルCDNの技術コアを作った数学者でもありますが、9/11事件でワールドトレードセンターに突っ込んでしまった飛行機に搭乗していました。 青年期をイスラエルで過ごしたLewin氏はテロリスト特殊部隊(サイェレット・マトカル)のもと尉官でもあり、たんなる不運な乗客としてだけでなく、機内で犯人を阻止すべく戦い、その結果、アメリカ同時多発テロ事件で最初に亡くなった方でもあるようです。
そしてその日の午後、世界は彼が造った技術とインフラの力を知ることになります。
ぼくは当時は八王子にあるガラケー関連ベンチャーに勤めていて、当夜はメンテ立ち会いか何かで朝までオフィスで一人でした。
まったりircチャットを見て待機しつつ、日本時間で夜中9時か10時に、ニューヨークのワールドトレードセンターに小型機が衝突する事故が起きたらしい? そんな馬鹿な… いやまって、大勢が乗ってる旅客機なの? えっまたもう一機? えっほかにも何かがいろいろ同時発生してるの?
とんでもない大事件が進行しているらしいことはわかりましたが、職場にはラジオもテレビもなく、Webが死に(そもそもWeb経由で情報を得られるニュースサイトもいまほどなかった)、ircテキストチャットでしか最新情報が入らない深夜を過ごしていました。
そんななか、いまでも思い出しますが、普段に比べチープなコンテンツではありつつ、CNNやYahoo! (US)が復活してきました。これが、著名サイトがAkamaiのグローバルCDNに急遽切り替えて配信されはじめた、なかなか歴史的瞬間だったようです。
僕がAkamaiを知ったのは90年代末ですが、当時はCDNという技術やコンセプト自体があまり知られておらず、ユーザが自分で近くて早いサイトを自分で選んだりしていました。例えば朝日新聞のサイトは本家asahi.comのほかにiij.asahi.comとかinfoweb.asahi.comとかプロバイダごとにミラーサイトがあり、読者が状況にあわせ「最寄りの朝日新聞サイト」を使うのが早いしマナーも良し、みたいな時代でした。ミラーサイトは、どちらかというと各ISPの「ご厚意に甘えて」置かせていただくものでした。
Akamaiは逆に、うちのCDNノードを御社のASに置けば、キャッシュが効いてトラフィック効率があがり顧客にとってもメリットだから、あなたのISPにもうちのノードを「置かせてあげます」という主従のゲームチェンジを起こした、と当時の上司が興奮していたのを思い出します。 CDN技術の核は、複雑なパラメータを伴う最短経路問題を解くことでもあります。それを強みに創業し成長したAkamai社では、数学者が起業しビリオネアになるということが起こりました。ぼくの当時の所属部門は出自がComputer Graphics開発であり、レンダラ開発者やシェーダ書きなど数学ワーカーが多かったので、ここへの熱い感激もありました。
その数学研究者であり、企業創立者でもあり、対テロ特殊部隊の大尉でもあった同氏の死が皮肉なきっかけとなり、新たなネットワークインフラが世界的に実証されてから23年たちました。というお話でした。