高校生のころ、坂本龍一がNHK-FMで持っていたラジオ番組「坂本龍一のサウンドストリート」を毎週愛聴していたのだが、そのなかで紹介されてはじめて出会った音楽。
女声合唱のブルガリア民謡。
ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンをゲストに迎えた日で、デヴィッドが持ってきたいろんな音楽を紹介するという流れのなかで、そのときかかったのはこのアルバムの一曲め Pilentze Pee.
あまりの素晴らしさに、ピーター・バラカンとデヴィッドと教授が数秒間絶句していたのがいまだに記憶にあたらしい。
東欧と西欧のはざま、和声的にもモーリス・ラヴェル的な近代感もありつつ、ポリフォニーとへテロフォニーの要素を併せもち、というか文字で書いてもしょうがない。鳥肌の出る音楽、うたとしては、39年生きてきて、いまだにベストのひとつだ。これが一番かもしれない。
教授の番組では、このレコードはほとんどまったく入手ができないとされていて、そしたら翌年ぐらいに、民族音楽に詳しい友人と下北沢の民族音楽専門店にいったら、4ADレーベルからコンピレが出るらしいとのことで、2ヶ月待ってイギリスからLPを取り寄せた。
そしたらそのうち、広告代理店にも気づかれて、TVCFでも使われたり、ダイエーにいったらCDが山積みになっていたりして、あーあ。
ともあれ、だから「あ、これ聴いたことある!」という人もけっこう多いかもしれない。
そんなことはともかく、この音楽、うたは、ただ、ただ、素晴らしい。音楽で鳥肌をたてたい、純粋にすばらしさだけで涙ぐみたい、音楽をやっていて方向をみうしなった、そんなときはぜひこれを聴いてみてほしい。
とにかく、Pilentze Peeだけでも人生のうちで一度は聴いてみるといいだろう。なんと iTunes Storeにもあったりする。150円だ。コーダの、クワイアがまたフェードしてくるところは、ただただ素晴らしさで、どうかなってしまう。