昭文

夕方、抗ガン剤(タキソール)は投与したものの、それはともかく、輸液 IVT ポートがまた詰まったらしく、で、そのポートはまさに彼の唯一の生命線そのものだ。
とりあえず、腿に穴をあけて注入。以前は腿からの注入を異様に拒んでいたが、いまとなっては彼のその隠れた理由が明確にわかる。

しょうがないので着替えを持っていってみると、半目を開けて呻くばかりで、焼死体のような感じ。不当勢力からの干渉のリスクにさらされる時間もなく、今度こそ順当に死んでくれそうで本当に助かる。ただ法的もろもろが済むまでは死んでは困るのだが。

結局、僕が10歳を越えて以降、僕が彼に多少なりともやさしい気持ちで接してあげられたのは、彼の癌が確定してからの2年間ちょっとだけだったようだ。