起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと / 磯崎 哲也

磯崎哲也さんの、ある意味定番本。

特に面白いな、と思ったのはベスティング (vesting) のところ。一般には退職や転職に伴う、確定拠出年金の権利・資産の持ち出しのことを言うらしいが、ここではストックオプションの権利行使のことを指している。

ストックオプションは、権利付与して2年は行使不可能な条件をつけ、せっかくSOをあげた人がほいほい転職流出していってしまうのを防ぐというのがよくあるパターン。前職でもそんなでした。あるあるですし、論理はわかります。

ですが、そこに加えて。引用。

一方で、ベンチャー企業は経営が不安定な未上場の時よりも、上場する前後からいい人材が多く入ってくることもよくあります。
人材を絶対的に「良い」「悪い」に分けることなどできませんが、創業の激動期にゲリラ的な活動をするのは得意だが、上場企業でややこしい規定や規則に縛られながら大組織をまとめあげていく場合にはあまり力を発揮できない、という人はよくいます。
(もちろん、「ポストが人を作る」ということもあるので、やってみたら上場企業でも活躍できた、という人もたくさんいます。)

 

そういう人は、無理に上場企業に縛りつけておくのではなく、今までの功績に経済的に報いたうえでポストを退いてもらうほうが会社のためになるかもしれません。つまり、企業が成長するのに合わせた人材の「新陳代謝」です。
古くからいる従業員だというだけで、上場企業の業務に向かない人が重要なポストに居座っていたのでは、会社の成長は望めません。

なので、べスティング、つまりSO行使縛りのキメは、株主総会決議が必要な要項では行わず、会社と従業員との個々の契約で定めておいたほうがよい、という話。

すごいわかるし、なるほどなー。です。

などなど、とてもすべてが頭に入るようなものではありませんし、いまやobsoleteになっている部分もあるとは思いますが、一読しておいて損はない一冊と思います。