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Dodge Charger TVCF (2010 Super Bowl Commercial)

car

アメリカのSuper Bowlというと、全米で最も視聴率が高まるアメフトのスポーツ中継。

ここで流されるTVコマーシャル枠も世界一高価なことで知られている。TVCFにとっては最高の晴れ舞台だ。アップルの、かのMacintoshティーザー広告「1984」が流れたのもここだ。

2010年にこの枠で流された、ダッヂ・チャージャーのCMが面白い。

ダッヂというのはアメリカの自動車ブランドで、馬力筋肉な男臭いクルマを出すところ。まさにこういうジャンルの車をアメリカン・マッスル・カーと称する。

チャージャーも、かつて60〜70年代においては「デカくて大味で馬力スゲー」という分厚いビフテキ特盛のようなクルマだった。

しかし70〜80年代にもなると、オイルショックとか日本車の攻勢とかエコとかの流れの中に埋没していった。

が、近年また男臭いブランドとして復活した。韓国車とエコなプリウスばかりが売れる2010年代のアメリカで。

そんなクルマのコマーシャル。

悲しげな眼をした男たち、仕事や家庭や社会のストレスに押しつぶされアイデンティティを喪いそうな一連の独白が面白い。

I will get up and walk the dog at 6:30 am.

I will eat some fruit as part of my breakfast.

I will shave.

I will clean the sink after I shave.

I will be at work by 8 am.

I will sit through 2 hour meetings.

I will say yes when you want me to say yes.

I will be quiet when you don't want to hear me say no.

I will take your call.

I will listen to your opinion of my friends.

I will listen to your friend's opinion of my friends.

I will be civil to your mother.

I will put the seat down.

I will separate the recycling.

I will carry your lip balm.

I will watch your vampire TV shows with you.

I will take my socks off before getting into bed.

I will put my underwear in the basket.

And because I do this...I drive the car I want to drive.

Charger. Man’s last stand.

ざっと訳すと

僕は毎朝6時半に起きて犬を散歩させます。朝食では果物もきちんと食べます。

僕は毎朝髭を剃ります。剃ったあとは洗面台を清掃します。

僕は8時には仕事に就きます。2時間の会議に出席します。イエスが求められるときにはイエスと言います。ノーという発言が望まれないときは口を閉じています。

僕は君の電話を取ります。僕の友達に関する君の意見を聞きます。僕の友達に関する君の友達の意見も聞きます。君のお母さんにも丁重に接します。

僕は椅子を片付けます。僕はリサイクルごみを分別します。君の化粧品を取ってきます。君が見るテレビのサスペンスドラマを一緒に見ます。僕はベッドに入る前に靴下を脱ぎます。僕は下着を洗い物カゴに入れます。

だからそして俺は…

クルマに乗る…

クルマを駆りたい。

チャージャー。男の最後の抵抗。

女性という、現実追従とコミュニケーションの生き物の社会、つまり「発言小町」的なものの対局にあるような、ストレスとフラストレーションの水面下であえぐ「男らしさ」が非常にいじましく、面白い。とても中二っぽくもある。

コマーシャルでそこまで狙っているのかわからないが、せめてクルマでブォーーンとかっ飛ばしたい! という欲望が男の幼児性の現れであることが浮き彫りにされているのも面白いところだ。

このCMは当然女性からは非常な反発をくらい、対抗ムービーもYouTubeにあがったりしている。いまいちネタ返しの切れ味が悪く、マジレスすぎる気がする。ガキ(男ども)にはクルマのコマーシャルでぐらい言いたいように言わせとけでいいかも。

クルマそのものは、商品としてとてもよくできている。4ドアベースにはなったけれど、クライスラー300 (ダイムラー・クライスラーの名前でメルセデス・ベンツと兄弟関係にあったころのシャーシなので、リアサスなどにメルセデス・ベンツEクラスの血が流れている) を、さらにワルく獰猛肉食な感じに仕立て上げ、6リッターV8の伝統「HEMI」エンジンを積んで、そのブロロロロ… という音は、デカいアメ車には全く興味ない僕も、おっ、コイツはちょっとイイナ、と徳大寺風にすこし食指が動く。

でもそのあとダッヂは、というかその親会社のクライスラーそのものがChapter 11で潰れたり、なんとフィアットの子会社として再生したり、なんか全然男の最後のブロロロロって感じでないので、それこそフラストレーションにつぶれず頑張っていただきたい。

僕はダイムラー・ベンツに提携を解消されました

僕は小型車の作り方は韓国人に教わります

僕は南米ではヒュンダイのOEMのクルマを売ります

僕は連邦倒産法第11章を申請しました

僕はフィアットに資本参加してもらいました

僕はヨーロッパではクライスラー300をランチア・テーマとして売ります

僕は日本ではランチアイプシロンクライスラーイプシロンとして売ります

だからそして俺は…