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NHK-FM「今日は一日 プログレ三昧」

さて、この2010/8/8という日は、たのしみにしていたことがもうひとつあって、NHK-FMで、おひる過ぎから深夜1時まで、ずっと連続でプログレッシブ・ロックを聴きまくりトークしまくりというしょうもない番組「今日は一日 プログレ三昧」があるのだった。

だいたい、この番組ロゴが、うれしすぎるじゃないですか。おまえらロジャー・ディーン入りすぎです。

いまどき、ラジオを聴くなんて二十何年ぶりというか、自分から放送時間に合わせてラジオのスイッチを入れて周波数を合わせるなんて、まえにやったときは俺まだ童貞だったんじゃないかしら、ってぐらい太古のことだ。
そもそも、ラジオを聴く装置というのが、自分のクルマぐらいしか思いつかない。
というわけで、900km走破のあいだ、この長時間プログレ音楽番組を聴くというのをたいへん楽しみにしていた。同乗の家族にとっては、こまったものだろうが…

開始時間をわずかに過ぎてから、しまった、と思いラジオをつける。
というか、いま東京じゃないので、NHK-FMがここだと周波数いくつなのか、確実ではないのだ。しまった!

自動選曲機能にまかせて、どんどん周波数を送っていると、どうも無音状態の局にときどきつかまる。
はて? もしや? と思い、運転しながらそこに耳をすませていると、かすかに川の流れや鳥の鳴き声が聴こえる。

ははぁ! そうか! いや、しかし、お前らしょうがないな!
これは面白い12時間になりそうだ!

つまり、番組しょっぱな、日曜の真っ昼間からいきなりかかっているのが、イエスの「危機」(Close To The Edge) なわけである。
あのへんてこな20分の名曲。
もちろん、イントロの、聴こえるか聴こえないかの環境音のところから流しているわけで、さっきはそれに引っかかったというわけだ。

これはきた。実にうれしい。実にたのしい。一億プログレファンのみんな、きょうは一緒にたのしもう!

しばしして、クリムゾンの人気投票から一曲えらんで、なんだが、なんと「アイランド」ですよ…
いや、宮殿とかあえて避けるのはよーくわかる。しかし、そうか、それでも Islands, いや、でも、まあ、うーん…
そうして、あの静かげな哀愁の、第一期クリムゾンの、最後のアルバムの、最後のアルバムタイトル曲を、たのしんだ。
いままで、あんま大したアルバムじゃないなと、ちゃんと聴いたことなかったんだけど…
もう40代なかごろにさしかかろうという、人生の後半に入り込んできた僕は、沸き立つ夏の積乱雲のもと、午後の日差しの山陽の田舎道をたどりつつ、座席で眠る家族たちをのせて、アイランドの、優しく哀愁なコルネットとメロトロンを聴く。
実にシュールで味わい深い体験。徹夜の眠さもふっとんだ。ちょっとあと数年は、忘れられない…

地方の山あいの国道や高速を飛ばしているせいか、谷間にさしかかるたびに電波がよわくなったり、おまけにトンネルを抜けるたびにNHK-FMの周波数が変わったりして難儀したものの、いろいろと楽しめた。

あれこれ立ち寄っていたので、そんなにちゃんとは聴けなかったのだが、あとなんと言っても一番の山場は、アルタード・ステーツによる、「クリムゾン・キングの宮殿」の、アルバムまるまる一枚の完コピだ。
King Crimson 本人たちでもなし得ていない、ほんとに人類にとって未知の偉業への挑戦だ。
もう、期待と不安でいっぱいになって、いま家族を乗せて妻の実家に向かっているんだ、などという現世の些細なことはすっかり全て頭から忘れています。

で、どうだったか、なんですが。
すばらしかったですよ!
ゲストのヴォーカルが、ちょっといまいちだったかも?というのは無きにしもあらずだけど。
あらゆるインプロから、完コピですよもう。
わが日本国は、第二次世界大戦では敗れたけど、この宮殿完コピの43分を残したということだけでも、評価されていい。これを聴いていなかった奴は、精子卵子レベルから人生やり直したほうがいいと思うよ。
また、アナウンサーが、曲名をきちんと「21世紀の精神異常者」と紹介していたのが偉い。最近は、ポリティカル・コレクトネスだかリスクヘッジだか、「21世紀のスキッツォイド・マン」とかことばを逃げる奴が多くて、まったくもってチンカスのウジ虫なのである。
今回のこのライブ、ちゃんとした音源だしてほしい。頼む。わたしはもう感激して、NHKの放送受信料をきちんと支払う気500%であります。渋谷NHKの暗い地下室で、半裸でムチ打たれながら大勢で発電機を回す仕事だっていいよ。

これの次は、これまたもう、MagmaのThe Last Seven Minutesとか、さらにマンドレイクの「飾り窓の出来事」とかやってたらしいけど、そのころには、残念ながら(?)島根県浜田市に到着して、寿司を食っていたのでした。