檀流クッキング / 檀 一雄

作家檀一雄ハッカーだ。自分の人生をハックせずにはいられなかった。火宅の人を読めばせつせつとそれがわかる。でもそんな、家族、愛人、食べる、旅する、そういった人生のフラグメントに真摯に正面からハックするしか知らず、またそれを楽しんだ男の、料理に対するもろもろを取り出した新聞連載がこの本。

この人はこどものころから家族の食事を作らざるを得なかった境遇にあったこともあり、料理が生活に密着したところにいつもある。いわゆるグルメ指向とか衒いはまったくない。「私には衒いはありませんヨ」という逆のポーズすらまったくない。ここにあるのは、ただただ、いろんなモノを、料理して、食って、楽しもう。という人生の推進力だけだ。

このひとの筆にかかると、あらゆる肉、魚、野菜、獣、食材が、「よし、じゃあコイツを何かしらやっつけて食おう!」という瑞々しいなにかに変化する。連載を淡々とつなげて本にしたんだなぁ、という構成にちょっと飽きやすさがあるのが残念だが、丸谷才一の「食通知つたかぶり」とならべて、食い物の本のベスト両雄。