買ってはいけないソフト: 宛名職人Ver.15を罵倒する

宛名職人 Ver.15という、株式会社アジェンダによる Mac OS X 用の年賀状ソフトがある。

宛名職人Ver.15 (08版)

Mac OS X 用の年賀状ソフトというのは少なく、というかおそらく同社しか販売していない。
同社の「宛名職人V11」というソフトを数年使っていたが、Carbon フレームワークによる、つまり Mac OS 9 〜 Mac OS X の過渡期的な世代のソフトであり、細かい使い勝手などに古いフレームワークで動くソフトであることからくる不満もあり、もちろん Intel バイナリ対応もしていないので、OS X Universal Binary 対応の新バージョンを楽しみにしていた。

新バージョンは 2007 年秋ごろに出るとアナウンスされていて、楽しみにしていた。
開発の遅れにより、すこし伸びるとアナウンスが出た。うーん、少ない人数でがんばってるんだろうな。がんばれ! 待つぜ!
またアナウンスがでた。そしてクリスマスの前だか過ぎただかになって、申し訳ない、ついに年内に出せなかったというアナウンスが出た。
年賀状ソフトを年内に出せなかったというと、マイクロソフト はがきスタジオ の金字塔がかつてあったのだが、これに続く歴史を打ち立ててしまった。合掌。

さて、年もかわって2008年、秋ごろにまた「こんどこそ登場」のアナウンスをいただき、しばし待ち、ついに出ました。さっそくダウンロード購入。

〜そして時が流れた〜

同社には Mac OS X で唯一の年賀状ソフトウェアを出していただいていることには一種の感謝と敬意を表したい。また、どうやら3人という少人数で最新 Mac OS X 環境への移植をおこなったスタッフのかたがた、とくに去年の年末、おそらく時間と出来ることの狭間で絶望をあじわっただろう経緯にはご苦労様でしたと申し上げたい。

そのうえで、この「宛名職人Ver.15」、販売されているソフトウェアとしてはちょっとなんぼなんでもあまりに出来がひどいので、情報提供として意見を公開し、また可能なら改善アクションにつなげていただきたい。
使い始めて数分で、これはヒドイと思い、同社に要望するつもりでメモをはじめていった(こんなことまでさせんなよ) のだが、なんかもう、これらを送っても同社のサポセンが可哀想なのと、こうしている間にもこのソフトの被害者が増えていくだろうことを考えると、公表しちゃったほうがマシである。上記amazonのユーザーレビューを見るだけでも、このすごさを垣間みることができるだろう。

1. 氏名を漢字入力した際の、ふりがな欄の自動入力がなくなった。宛名職人V11はできたぜ。

2. 氏名を漢字入力する際、人名入力機能がデフォルトでなくなってしまった。
デフォルトでは普通のかな漢字変換。人名入力機能は別機能として実装され、別ウインドウがポップアップする。使い勝手は悪い。
宛名職人V11はできたぜ。IMのハンドリングあたりがCarbonとCocoaで違っていて困難に遭遇したのだろうかと優しく想像できなくはないが、使い勝手は相当劣化。

3. 「住所録一覧」ウインドウで、グループを選択しているとき、新規カードの作成ができない。グループをいったん解除しないとならない。いちいちマウス操作。フォーカスも飛んでしまう。だめすぎる。

4. 「住所録一覧」ウインドウで、グループを選択しているとき、カードの削除もできない。以下同上。

5. 「住所録一覧」ウインドウで、検索欄にフォーカスを移すショートカットがない。
Command-f で飛べよ常考。これもいちいちマウスで操作しろと? どんだけゆとりなんだと。宛名職人V11はできたぜ。

6. カードなり住所録レコードの next, prev のキーバインドがない。いちいちマウスで操作しろというのか。

どんだけゆとりなんだ。宛名職人V11はできたぜ。

7. 敬称入力欄では、キー操作だけでプルダウンから選択できるようになっていてほしい。

これもいちいちマウスで「様」「先生」を選べというのか。こんなことでは、パソコン教室に通う70歳男性のレベル以上には誰も操作効率は上がらない。宛名職人V11はできたぜ。

8. 連名の並び順変更ができない。
どういうユーザインタフェースにするか悩むところではありますが。宛名職人V11はできたぜ。

9 住所レコードのソートができない。

「五十音順に並べて住所録をみたい」というシンプルなことが、

一体どうやったら可能なのかいまだにわからない。意味わからん。

ランダムにならんだ住所録の印刷結果を見ると、本当に俺様の人生の一秒一秒が愚弄されていると感じる。宛名職人V11はできたぜ。

10.「連名1」が未入力のとき、「連名1」の印刷フラグをoffにしても勝手にonに戻ってしまう

11. チェックマークや印刷済のフラグは「書き出し」ではエクスポートできない。

(これが ContactXML の仕様の制限によるものなら、同ソフトに罪はない)

12. 「チェックマークはついてるけど印刷はまだ」みたいな検索ができない

ほんとにできないのか? おいほんとにできないのか? え?

「チェックマークがついてる・ついてない」のレコードを抽出するの絞り込み機能は「グループ」として実装されてるけど、ユーザが追加できるのは

固定文字列を住所レコードに割り当てる、つまり「タグ」っぽいことのみ。

「グループ」としては、ユーザが作れるグループ以外にも、ファクトリー・プリセット的に

「2008年に年賀状を出した人」「2008年に年賀状をくれた人」「未印刷」「チェックマーク付き」

というグループが定義されているが、こういうものをユーザが作ることはできない。

「チェックマークが着いてるけど未印刷」というものだけを絞り込んで表示なり印刷ということはできない。これは心底絶望。宛名職人V11はできたぜ。俺も41歳、かなり丸くなったとはおもうけど、ここでキレのスレッショルドを突破した。公開されたWebでこの市販ソフトを罵倒するほうが社会利益に叶うと判断した。

チェックマークなどの属性情報を汎用的なフォーマットで交換するのは確かに難しいかもと思い、

同社の 宛名職人2009 Premium (Windows向け) までわざわざ購入して試してみたにも

かかわらず、相互のネイティブなファイルフォーマットでのデータ交換はできなかった。

(えっと、この時点で、同社の年賀状ソフトを3本購入まで付き合ってるわけね)

まあここは誰も「できる」とは言ってないことをしてるので必要以上に責める気はない。

しかし、Windows版の宛名職人は、操作性がやや事務っぽくて取っ付きにくいなとは思ったけど、

必要そうな機能がちゃんと実装されているマトモな市販ソフトウェアだということがわかった。

MacOS宛名職人V11 との血筋も感じる。

逆にいえば、今回の宛名職人V15への人的リソースの割り当てがあまりに酷かったということだろうか。

13. 少し戻るが、グループで絞り込んでから「一覧表示中の宛名データ」のみを書き出す(ContactXML 1.1などに)

がきちんと機能しない。余計な住所録データも一緒にくっついて書き出されるので、そのデータを

インポートしたソフトのほうでも余計なデータを取り除くゴミ掃除をしなければならない。

というか、こんな調子では、必要なデータがすべて書き出しされたのかどうかも信頼できない。

もうここで疲れた。やめ。疲れたよパトラッシュ。

とりあえず同社には、

前のバージョンの販売を継続せよといいたい。

宛名職人Classic2」という名前で、前バージョンも10月まで販売していたらしいが、

このまま販売したほうがいい。もはやこれは社会的責任といってもいい。

そのほうが御社のサポートもラクなはずだ。

この宛名職人Ver.15はいったん忘れて窓からすてて、まともなものを一から開発しましょう。

待ってますよ。

P.S.

11. チェックマークや印刷済のフラグは「書き出し」ではエクスポートできない。

(これが ContactXML の仕様の制限によるものなら、同ソフトに罪はない)

これはやっぱり

ContactXML の範疇ではなかった。

その後、いろいろな手段をためしたが、

やっぱり履歴もふくめたデータを

宛名職人Ver.15」から外に持っていくことはできないようだった。

結局、むかしの「宛名職人V11」に、住所データと属性を、ひとつずつ、

目で確認しながら、手で移していった。

レコードが1,000件以上あるなら、バイナリのデータフォーマットを

解析して何か作る気にもなるが、数百以下の場合は手で苦労したほうがまだましだ。

人生の時間は有限である。「宛名職人Ver.15」にかかわるのではなかったと思っている。

みなさんもよく判断していただきたい。