玉姫様 / 戸川 純

戸川 純のファースト・ソロ・アルバム。金字塔。
出たとき僕は高校二年で、当然アナログ・レコードで聴いていたけれども、CDとしては、おととしぐらいに紙ジャケで限定再発が出たぐらいで、ぱっと買える状況ではないようだ。

所収の曲の中には、アレンジを変えてベストなどに収録されているものもあるが、やっぱりオリジナルのこれがもっともすばらしい。
ノイズだらけの足踏みオルガンと、そのかなたから漂うようなヴォーカルが聞こえてくる「怒涛の恋愛」、フォークロア感満点の「諦念プシガンガ」。「昆虫軍」「隣の印度人」「踊れない」などはハルメンズとかな日本の愉快なオルタナ・ロックの系譜だし、音響実験的な「憂悶の戯画」は、また当時の初代 Fairlight CMI とか Emulator I の8bitな味がさらにアートを醸し出している。
アルバムタイトル曲の「玉姫様」は、ご存知のとおり女性の月経をベタに歌っている曲だが、シモンズのドラムに、Prophet 5のベースにストリングスに、DX-7の鐘にと、なんとも当時の仕上げが懐かしく、またキャッチーでパワフルだ。(曲は細野晴臣)そしてトリはもちろん、パッヘルベルのカノンに戸川が歌詞をつけた「蛹化の女」でこのアルバムは終わりをつげる。

ともあれ、本作はBrian Eno/David ByrneのMy Life in the Bush of GhostsとかJapanのTin Drumなどとならぶ、80年代前期のオルタネイティブの名作中の名作であり、これがぱっと入手しずらいという現状は、日本文化に悪影響も甚だしいと思うのですがどうか。