生きかた下手 / 団鬼六

団鬼六といえば誰でも知っているSM文学の巨匠だが、そんな彼の自伝ふう随筆集。 

生きかた下手

生きかた下手

 

田舎の英語教師から洋画のアテレコ台本作家に、そしてエロ業界の作家、台本書き、プロデュース、出版社主宰。そして栄光と凋落。知っている人は知っている、弟子だったたこ八郎との関係や、元女優で直木三十五の愛弟子であったご母堂の話など、昭和サブカルを駆け抜けてきた波瀾万丈が読みやすい文章でつづられている。

エロより純文学の世界を高尚なものとあこがれ、名前を変えてまで脱皮を目指し筆者にもその方向を薦める清水正二郎(胡桃沢耕史)に対し、俺の仕事は売文、エロも文壇も上下はないと次第に温度差をあらわすあたりも面白く好感が持てる。
ただ、色川武大(阿佐田哲也)ほどの明るい透明さ(と、ときおり煌めくモノノアハレ的な悲しさ)はない。

檀一雄「火宅の人」ではないが、文学のデーモンや、作家、アーティスト、制作創造活動にたずさわるなら何かが外れていなきゃ終わりだろ。と思えるかたなら一読わるくない。