トゥモロー・ワールド

世界中で子供が生まれなくなってしまった近未来のお話。
もう20年近くも子供が産まれていないので、世界中が希望を失い、殺伐とし、内戦に明け暮れ、かろうじて国家の体勢を保っているのは英国のみ。そのイギリスもあいつぐテロや移民排除強行により、どこにいても爆発や銃声が絶えない。そんななか、歯車のような毎日を過ごす公務員である主人公に接触してきた、むかしの学生運動仲間でありかつての妻でもあるテロリストのリーダー。彼女が言うには、なんと妊娠している女性がひとりいる、彼女の保護に力を貸してほしい、という。

トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション [DVD]

絵は、もろもろのディティールは鮮明なものの、色彩的には暗く淀んでおり、とてもイギリスっぽい。ダーク感のある未来といえば、1984といい未来世紀ブラジルといい、暗い英国っぽさはツボであり必須なのでとてもよろしい。
主演のクライブ・オーウェンは渋い名優で、BMW Filmsのころからとても好きだ。
話題の長まわしだが、冒頭のシーンもそうだし、主人公ふくめた車が森の中で襲撃されてからの4分ほどのシーン、そしてラストのほうの戦場のシーン、どれもたいへん見応えがある。
音楽も、斜陽そのものの英国官庁へ向かうロールスロイスのカットに「クリムゾン・キングの宮殿」がかぶさったり、そのあとのシーンでも、発電所のうえに空飛ぶブタのオブジェが映っていたり、プログレ好きなら思わずにやりとするあたりも。
出演するクルマも、主人公の友人のサブカル系老人がシトロエンCXブレーク(の、顔を加工したやつ)、森で襲撃されるときがフィアット・ムルティプラII、農場から脱出に使うのがルノー・アヴァンタイムと、いずれもキッチュでプログレでロスト・フューチャーなチョイス。

この映画、謎は謎のままほおっておかれる。人類に子供ができなくなった理由は不明のままだし、結末も結局どうなるのか割と放りっぱなしだ。なので細かい首尾結構が気になる向き、話がキチンと落着しないと駄目な人には向かない。カタルシスもそうあるわけではない(ただ、最後のほうの、印象的な長回しの最後のほうのシーンは、ちょっとぞぞっとくる感銘を受ける人もおおいだろう。ここがいちばんのカタルシスかもしれない)。
前田有一の「超映画批評」でもかなりの評点を得ていたこの作品、ダークな近未来風味の映画、近年の映画の編集テクノロジを満喫したい人、クライブ・オーウェンのファンにはおすすめ。僕はわりと満足。