音楽 / 三島由紀夫

三島由紀夫による心理分析サスペンス小説。己の不感症を「わたしには音楽が聴こえない…」と表現する女性に対峙してゆく精神分析医の手記のかたちをとっている。図書館でふと見つけて、おととし読んだばかりなのだけど、吸い込まれるようにまた読んでしまった。 

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

 

淡々と、しかし緊迫感をもって進行する文体、次々にあらわれる謎と新事実。一級のエンターテインメントとして実にすばらしい。個人的に好きな小説のベスト20ぐらいに入る。いわゆる三島文学とはちょっと毛色がちがう一冊です。

かつて映画化もされたようだが、医者の男と患者の女の、息詰まる心理分析のたたかいと、おもに女性の側からみたセックスと精神の葛藤が主題なので、映画にした場合、よほどセンスよく仕上げないと、ぐだぐだしたエロ映画にしかならないような気がするのだがどうだろう。でもわるくない評価をしているかたもいらっしゃるので (注意: このページはネタバレ全開)ちょっと探してみようかな。

これを芝居にしたばあい、ほぼ精神科の分析室だけを舞台として脚本が成立するから、ほんとうに巧い役者たちでやったなら、かなり良いかもしれない。見てみたい。