個人的にクラウス・シュルツの最高傑作。
Klaus Schulzeというと、Tangerine Dreamの初期メンバーであり、Moog IIIシンセサイザーの箪笥を並べて電子音楽をやる人というか、富田功みたいな方面のドイツ人。
ただ、「世界のトミタ」は、手塚治虫から屈折と苦悩を抜いてしまったというか、明るい未来と自然をスッキリ信じちゃってるんだ by 広告代理店みたいな感じがどうも好きになれないのだけれど、「電子音楽」ってそういう体制側の未来礼賛みたいなものだ、という人がいたら (20年ぐらいまえにはいっぱいいたな、クラフトワークなどもずいぶんそういう手合いにいじめられたようだ)、いやそうじゃないんです。
本作はA面とB面に1曲ずつ(私が持っているのはアナログレコード)の、古き良きプログレの長さを持っているが、とにかく1曲目のA Few Minutes After Transferの、ゲルマンの黒い森に秘められた狂気みたいなものが、静かに進行するムーグのリズムの奥からひたひたと湧き出てくる様子は非常にすばらしい。
途中からしだいに入ってくるMichael Shrieveのパーカッションと、Wolfgang Tiepoldのチェロ、そしてSchulzeの分厚いシンセストリングス、ただただ、すばらしい。
これも自分が死ぬ日に聞きたい10曲のひとつ。