Volvo S80

San Francisco, San Joseで使っていた車。Hertzの在庫で、良さそうなのがこれぐらいしかなかった。(欧州車だとVolvo, Audiぐらいしか借りられず、A4あたりは出払ってしまっていた)
いちおうボルボの「いっちゃんいいやつ」だ。

S80は直6横置きというヘンテコな設計のクルマだ。
直6エンジンというのは、もはや回転フィーリングがイイとかそういう官能・趣味的なメリットしかない内燃機関形式だと思う。だからBMWなどが頑張ってボンネットに縦長にL6を搭載するのは商品的にもアリだ。でも、横に置くというのは他に聞いたことがない。たぶん、ボルボというブランドの位置づけのサガとしての安全性志向のため、クラッシュしても前後方向にエンジンルームの余裕があるように、かつシリンダー多めにしてエンジン動作の高級感を出そうとした、ということじゃないかと思う。
というわけで、細長いエンジンをわざわざ横倒しに載んでいるので、クルマの横幅は無用に広い。
ただ見てみたら、いまのS80のラインアップは、直5とか直4ばっかりのようだ。当初のコンセプトはどこへいった…

スリークで上品な見た目はかっこいいし、コンソールもステンレス風味のトリミングがなされたメーター類など北欧風味で、なかなかイイ車に乗ってるんだなという気分は充分にあじわえ、革の香りも手伝ってわるくなかった。実際、走っているのをよく見た。
ただ、自動車として乗った感じは、2日間でざっと250マイル、400km ほど乗ったのだけど特に感心しなかった。

ボデーのしっかり感は必要充分。とはいえ、隣にフォルクスワーゲン・ゴルフとかヴェントとかジェッタとかパサートなどがいると、彼らの「バシュン」としまるドアの音に、やっぱゲルマンのクルマの鋼性感はひとクラス違うよなあとうらやましいのも事実。つまりS80の頑丈感は、いまどきだとフツー。

エンジンの力は、ハンドルをある程度ステアした状態で発進を試みるとすぐにタイヤが鳴りだしたり方向が乱れたりと(ちなみにTCRもついているし、もちろんonのままなんだけど)、イニシャルパワーはそこそこある演出だけれど(わざとなのかな? 微妙)、高速巡航してての追い抜きトルクなどはもうちょっとほしい感じ。

ハンドリングは、正直ちょっとがっかり。
BMWのように快活に振り回せるわけでもなく、といって直進性に優れるわけでもない。すくなくともフランス車好きが満足する直進性はこのボルボにはない。
あるいは、いわゆるアメ車のように、ハンドルがダルで、そのかわりUSの路面の雑なインターステートを飛ばしていて多少ステアリングに入力があっても全然キニシナイ、というおおらかさ、というわけでもない。
常時微舵修正を頭において運転する感じで、インターステートでは、両手をステアリングに十時十分にかけて運転することが求められる。かったるい。一日2〜300kmも運転したら、なんかもういいやコレ、という気分になってしまった。
特にがっかりしたのが、中高速でのレーンチェンジやカーブで、へんなモーメントが残って、車が暴れたり、収束がわるくてオットット、ということが (再度ためした結果も含めて) なんどかあった。
これは、ダメだ。日本でいうと、東名の御殿場あたりの高速下りカーブであるとか、首都高C1あたりを安全に余裕をもってビジネススピードで巡航することは、このVolvo S80の器ではできない。S80を買ってしまったひとは、日々安全運転をするのがよろしい。

ちなみにタイヤは扁平率50の Michelin Pilot で、そう悪いタイヤではないはずだ。もっとも、タイヤなんてどこでOEMしてどこに納入するかによって全然ちがうから、店で売っている Pilot と、Hertzに大量納品されているPilotが全然ちがうシロモノである可能性はおおいにある。

ブレーキは、踏み込みは甘めだが最終的にはちゃんと効く。

あとひどかったのがATセレクタで、見た目はかっこいいが、ボタンをおしてがちゃがちゃやる感触がほとんど100円プラモデルだ。安っぽいこと軽自動車以下で、タッチも粗悪なわりに堅い。さらにDから4, 3, とシフトダウンするのにすべてトリガーボタンを押さねばならず、おまけにゲートがストレート。Dから4にひとつだけ下ろそうとすると、かなり注意力をつかって操作しなければならない(さもないと一気に2とかまでいっちゃってエライことに)。つまり、高速道路で安全にシフトダウンしてエンジンブレーキを得るということがほぼできない。これはひどい

うーん、と思ってホテルでWebを見てみると、当地では Volvo S80は starts from 37,000USD ぐらいのプライスレンジのクルマなのね。そこいくと、日本国内では600万以上する。なんなんですかねこの値段の高さは。

ボルボはたしかにいいブランドで、僕が子供のころは、3点シートベルトやコラプシブルステアリング、クラッシャブルゾーンなんて全然なかったし、そもそも「安全な、くるま、って、どういう意味?」って概念がワカンネーぐらいの時代だったから、安全で頑丈な車という視点のある人には、メルセデスボルボぐらいしか選択肢はなかった。
高校の同級生でも、190Eとか240GL (ボルボのあの古き良き弁当箱) あたりを親のお下がりなり買ってもらったりというのは基本パターンとしてあったと思う。1980年代おわりごろ。

ただここ10年ほど、ボルボの人気は予想外に良いですよね。ハードウェア的には単に三菱やマツダの中型車であるものが、ボルボの衣をまとったとたん400万円代にプライスレンジがアップしたりする。
商売としては実にすばらしいし、いろいろあやかりたい。ブランドを確立して、あとはラクに商売する。物事はこうもっていきたいものだ。