ツイン・ベスト / ヒカシュー

ヒカシューに出会ったのは高一のときで、ということは、かれこれ22年前だ。

ツイン・ベスト

ツイン・ベスト

  • アーティスト:ヒカシュー
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD
 

最初は、クラフトワークの「モデル」をカバーしてる生意気な日本のバンドが居やがるらしいという、それはお前のほうが生意気だ、というところから聴きはじめたのだが、なんともニューウェーブというか、テクノというか、オルタネイティブというか、それらが非常に日本の土着なポップさに融合して、あとなんといっても巻上公一の、まるで「おかあさんといっしょ」のおにいさんの如く明瞭でありながらクセのあるヴォーカルが、妙にやみつきになる感じで。

「20世紀の終わりに」は、たしか当時「ぴゅう太」か何かのコマーシャルソングにもなっていて。

そんなこんなで、かれこれ20年ちかく聴いていなかったのだけれど、ひょんなきっかけで会社の人とヒカシューの話になったりして(彼女、なんと巻上公一と知り合いらしい)、家を掃除したらこれまた太古のヒカシューのテープがでてきたりして、懐かしさに感涙にむせぶあまり、CDを探したけどなかなか無さそうで。

というところに、amazonにいきなりベスト盤が出てきたので、1秒で購入した。

2枚組のベストで、「日本の笑顔」以前の3枚の内容をほぼ網羅している。1stの「ヒカシュー」はなんと全曲入っている。「20世紀の終わりに」はもちろん、「プヨプヨ」「テイスト・オブ・ルナ」「レトリックス>&ロジックス」「モデル」など名曲の数々。もちろん、あの明るく不気味にシニカルな「幼虫の危機」も入ってる。楽しいな〜〜〜〜幼虫が死ぬなんて〜〜〜〜〜〜 たのしいな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜にんげんもしぬなんて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

…クルマを運転しながら、絶叫してしまった。はあはあ。この曲も、こどもたちに教えたら、イチコロで大喜びなんだろうけど、おこられるだろうなあ。

レトリックス&ロジックス
モデル
ルージング・マイ・フューチャー
テイスト・オブ・ルナ
20世紀の終わりに
プヨプヨ
ラヴ・トリートメント
炎天下
何故かバーニング
ヴィニール人形
雨のミュージアム
幼虫の危機
ドロドロ
白いハイウェイ

2ndの「夏」からも結構収録されている。「パイク」なんか、やはり当時頭角を現してきたばかりの、イギリス・ニューロマンティックの旗手ウルトラヴォックスっぽいよね。「ふやけた〜〜〜」もいいのだけれど、Roland System 100で変拍子シーケンスしまくりの「ピノ・パイク」が特にすばらしい。これを知らずに日本のテクノだのワイエムオーだのわかったようなことをいう若造は、まず正座してこれを38回ぐらい聴いてほしい。ホンモノの電気回路の、本当のローランドのアナログ回路が出す、ツブが立ってはじける矩形波というのはコレだ! ということも魂で受け止めてほしい。

夏

  • アーティスト:ヒカシュー
  • 発売日: 2009/09/09
  • メディア: CD
 
アルタネイティヴ・サン
不思議のマーチ
パイク
謎の呪文
オアシスの夢
ふやけた■■
スイカの行進
ビノ・パイク
瞳の歌
ガラスのダンス
18才のドンキホーテ

そして名作「うわさの人類」から5曲。

うわさの人類(紙ジャケット仕様)

うわさの人類(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:ヒカシュー
  • 発売日: 2003/09/10
  • メディア: CD
 

もうなんというか、「ト・アイスクロン」が入っている。これはもう、シンセだのプログレだのが好きな全人類に聴いてほしい名曲中の名曲で、特にメロトロン好きの人には、日本全国ひとりひとりにこの曲を聴いてもらってまわってあるくことに僕の余生を費やしてもよいぐらいの名作だ。

イントロのパーカッシブなシーケンスは、どうしようもなくRoland System 100のアナログシーケンサで、巻上公一のダークで哲学的なヴァースのあとに、ベタなんだけど、ホワイトノイズとS/H(サンプル・アンド・ホールド)がきて、

(ああ、もうやめて…)

そのあとに、情念のこもった野太い低音の矩形波と、あたかも人間の業(ごう)を一身に背負った如くのメロトロンがやってくる。

全身の鳥肌が臨界反応を起こして、肉体すべてが分解して粉になってしまいそうだ。小田原在住のメロトロンオタク、井上誠に僕は僕はいま殺される…

さらに海琳正道のサイケなギターと、泣きのサックスが追い打ちをかける。

メロトロン+シンセものの楽曲のなかで、文句なしに世界のベスト曲のひとつだ。

あまりのすばらしさに、まじめに聴くと本当に心臓とか体にわるいので、気をつけよう。

ト・アイスクロン
うわさの人類
出来事
新しい部族
二枚舌の男

本当に、「ト・アイスクロン」を20年ぶりに聴けた感動は筆舌に尽くし難い。
そういえば太田蛍一 (大滝詠一じゃないよ) のこのキモチワルイジャケットも本当に20年ぶりに見た。懐かしくて泣ける。

この感動は、20年間タメておいて一気にもどしたインパクトも相当でかいと思われる。これは年をとることの役得だろう。

クラフトワーク「放射能」とタンジェリン・ドリーム「フェードラ」の2枚を封印しておいて、20年間がまんして、20年後に聴いてみようか。ここまでやったら、ほんとうに病院にかつぎこまれて死んでしまいそうだ。