ファイヤーフォックス

ソビエトの超新型戦闘機を奪うべく、かつての辣腕パイロットがソ連に侵入し、かっぱらって空中戦とかもかいくぐってゲットしたぜ! という映画。
なんといっても伝説の名ゼリフなのが `Think in Russia'「ロシア語で考えろ!」で、このヒコーキ、なんと思考制御装置がついているのだ。クリント・イーストウッド監督・主演。中学生のときに映画館でみた。

ストーリーはベタだ。主人公がベトナム戦争のトラウマにとらわれており、要所要所で火に包まれるベトナム人の少女の悪夢に悩まされるというのも、ひとむかし前までのアメリカ映画によくあったネタだ。全体的にいろんなことが主人公に都合よく展開したりするが、あまり細かいところまで気にして突っ込んでいるとキリがないので、ロデオ・テキサス・厚切りステーキ、イヤッホーという感じで観るのがいい。

とはいえ前半の、ソ連領内に潜入して空軍基地にたどり着くあたりまでは、暗く緊迫感のある雰囲気が渋めでよろしい。問題の新型戦闘機、ミグ31「ファイアーフォックス」がなかなかずっと出てこないのもよろしい。

ところが、主人公がミグを奪って離陸してからというものは、青空や海面や北極のミゾのなかをとびまくるファイアーフォックスの独擅場。ひたすら模型とオプチカル合成のかたまり。フチにブルーバック合成の青みをのこしつつ、空力を無視して縦横自在にとびまくるMig-31の勇姿。ちなみに特撮監督はあのジョン・ダイクストラ。GOTO文はダメというダイクストラじゃなくて、特撮技術の黎明期からILM設立メンバーを経て今に至る特撮の大御所のダイクストラだ。
おまけにオーケストラでがんがん盛り上げる映画音楽が、空をみろ、いったいお前はスーパーマンかよ、と突っ込みたくなるシロモノで、そのとおり、映画音楽を担当しているのは、まさにスーパーマンのスコアも手がけたモーリス・ジャール。ジャン・ミッシェル・ジャールの親父といったほうが、シンセとかプログレとか聴くひとにとってはわかりやすいだろうか。

というわけで、延々と暗く抑圧感のある前半から、一気に青空だらけのハレた後半に移ったあとは、ちょっと観ていてはずかしいところもあるが、ここは「ジャッカー電撃隊」とか「ウルトラマン」でも楽しむように、童心に帰ってたのしもう。
この映画に出てくるMig-31は完全に映画のために考えられた架空のヒコーキだが、こまかいディティールにはミコヤン・グレビッチ設計局っぽさを出そうとした努力も感じられ、軍用機オタクだったその中学生は、当時ブツブツいいながらも満足した。