キリクと魔女

コンピュータ・グラフィクスの研究開発の仕事をしていたときは、内外の論文とかデモを読んだり見たりするのも仕事の一環で、そういうわけで海外の実験的なアニメーション・フィルムもいろいろ見た。
そこで鮮明なのはUSとヨーロッパ圏の芸風がまったく違うことで、あくまでもエンタメ、ストーリーの面白さ、画の面白さとわかりやすさ指向の北米の作品に対し、ひたすら芸術的で難解な欧州発。というのは常に同じだった。

このアニメ作品ももろにそれで、見れば制作は CANAL + (キャナル・プラス) という、ある意味 Pixar と同じぐらいの老舗。音楽をユッスー・ンドゥールがやっているのもポイント。魔女に苦しめられている村で、母の胎内から自ら生まれいでた少年? 赤ん坊? キリクがあの手この手で活躍するという、基本的にはポジティブで明るい物語を、なんとも神話的な雰囲気、独特の画でシュールに見せる。なんだこりゃと思いつつ、ついつい惹きこまれる独特の魅力を持った作品。結末あたりの話の展開は、これはあきらかに米を食って生きている草食民族のものではなく、肉を食ってシュールに生きているフランス人のものだ。

シュールといえば、黒く背の高い魔女のたちはだかる姿と顔には往年のグレース・ジョーンズをつい想像してしまい、するとどうしても、砂漠のかなたに巨大な Grace Jones の頭部が出現してパックリ開いた口からクルマがぶぃーんと出てくるという、あのひどくシュールでわけのわからないシトロエンCXのコマーシャルを思い出してしまい、アフリカの砂漠を走るキリクの追っ手にいつCXが出てくるか気が気ではなかった。この映画の国内配給はスタジオジブリとのことだが、宮崎駿の頭にもこれがよぎったであろうことにほぼ100%の確信がある。