国際鉄道模型コンベンション(2)

(前回の続き)

ガラステーブルの下にレイアウトを作り込んで引き出せるようにした例

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これはもうレイアウトというか、空間のスナップショット。「下河原線の歴史」というのが、なんとも東京育ちの鉄な人間のツボをついていて、泣けるじゃありませんか。

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ペーパー製作

特にHOだと、ペーパーで車体を製作するのはごく一般的な手法だったと思うのだが、いまでもそのようなので安心する。ペーパーといっても、いわゆる「紙工作」的なものとは一線を画し、パテを盛ってサーフェーサーを塗って、そのなかから削りだし磨き…というものである。

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CAD-NCによる製作

30年まえとは違って今ではパソコンとかあるわけで、PCベースのCADソフトで NC加工機をドライブして車両を自作量産することなんかもできるのか。

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ディフォルメと「遊び」

僕は鉄道模型のあとのヒコーキものでも、ストイックなスケールモデラーだったので、実物のない、空想とかデフォルメした「模型」というものが許せなかった。例のガンダムブームで模型店がロボットのプラモデルのオモチャに占領されていくのは僕にとっては世界がレイプされているのと同じで、いまだに根強い私のアニメ嫌いの大きな原因のひとつだ。
(ガンプラも製作したし富野の設定資料集とかも持ってたが、これらは頼まれて製作する仕事なり、単にそのための資料であって、好きでやったことは一度も無い)

とはいえ私も大人になって、受容度がひろくなったので、「遊び」のある模型も受け入れられるようになってきた。

車両の長さを半分に縮めてデフォルメしたもの。なんか最近鉄道模型売り場でよく売っているねこれ。いっぱい並べてやってみるとそれなりにおもしろそうだ。でも当時の僕だったら許せなくて、模型店に火をつけるか! って感じだったんだろうな。子供は極端でいけない。

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サンダルとか、ごはんをたべるペーパートレイのうえにレイアウトの断片をつくりこんだもの。おもしろいし、当時もTMS (鉄道模型趣味) 別冊のカラーページの合間とかによく載ってたネタだが、当時は当然こういうのも苦手だった。

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これなんか、トンネルや山や地面や車両ぜんぶ毛糸で手編みですよと。

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ちいさく丸い世界に作り込んだレイアウト。土台部分にパワーパックなどもビルトインされている。このまるい世界全体も、モーターでゆっくりと回転する。細部のディテールの凝りもちゃんとしていて、実にセンスがよく楽しくて気持いい。ちょっとまいる。

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これも実にいい。夢の国というか、千と千尋とかそういうファンタジックな雰囲気がとてもいい。さっきアニメ嫌いとかいっていたのは誰だろう。

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このへんも。

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夢のビデオ中継

車両にちいさなビデオカメラを内蔵して、先頭車からの風景をテレビに中継しているところもいくつかあった。これも当時、ぼくが、いつか億万長者になったらやりたいと思っていたことだ。いまはできるんだなぁ。すばらしい。

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こちらも同様の企画。さらにこちらは、運転台先頭からの景色ではなくて、客車に乗ったほかの乗客(もちろん模型ね)も合わせて映し込むかたちでカメラを引いているので、さらにリアル感、マッタリ感、白日夢テイストが出ていて、さらにすばらしい。

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ただもちろん、中継をみていると、線路とか駅の風景のかなたに見えるのは、この展示会場の屋内であったり、レイアウトをのぞきこんでいる巨人たちであったりする。

スポーツのTV中継で、サッカーのグラウンドとかバッターのネット裏とかに、本物そっくりに広告とか情報をリアルタイム3DCGで差し込む技術はすでにあるわけで、
こういう鉄道模型の車内からの中継映像を加工し、リアルな背景とか、駅のホームを歩く人物とか、ぐいぐい3D CG合成するのはどうだろう。数百万ぶっこめばいけそうな気がするのだが。

情シス的鉄道模型

京王線を、レイアウトのみならず運行ダイヤまでシミュレートする一団。駅のディスプレイとか電光掲示板、遅延情報告知までやってる。駅に車両が入線すると当然女性の合成音声でアナウンスがながれるのはあたりまえ。すばらしい。今はパソコンがあるからこういうこともホビーレベルでできるんだなー。

とはいえ、考えてみると、そもそも「パーソナルコンピュータ」ってものの誕生に鉄道模型が深くからんでいたのは、Home Brew Computer Clubとかいったキーワードでぐぐってみるまでもなく、計算機の歴史の常識だろう。

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とまぁ、そういうレイアウトの運行管理や自動運行を制御するソフトウェアを専門に開発するソフトウェアハウス。泣けます。なんともこの会社のWebサイトも見てみていただきたい。

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日本の哀愁

「哀愁の晩秋」系のレイアウト。もうね、おれのツボをつかれて、胸がばくばくして苦しい。心不全になりそうですよ。ここに小汚いキハ65の2連でも走ってきてみなさい。もうね、(略)

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ナロー! ナロー!

ナローってのはnarrowで狭いわけで、つまり狭軌鉄道のこと。世界からみると日本の国鉄のゲージ (レールとレールの間の幅) は1,067mmで、世界の標準軌である1,435mmに比べると狭いので、つまり国鉄だってナローといえるのだが、ふつうナローというと600〜700mmぐらいのレール幅の、山の中の軽便鉄道とかいったものを指す。

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なので、縮尺が1/87のHOゲージ (16.5mm) と縮尺は同じに作り込んで、しかし模型のレール幅 (ゲージ) は本来縮尺1/150のNゲージ (9mm) を流用してナローな軽便鉄道レイアウトを製作、といったことが一般的に行われる。

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天商堂

天賞堂はあいかわらず、キレイに金属加工されたお召し列車のたぐいを銀座のショールームで高価に販売していらっしゃる。という感じで。

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TOMIX

TOMIXはオモチャあがりという偏見がいまだにあるのでどうでもいいとして。

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GreenMax

グリーンマックス。ちょいと便利な小物やシーナリーを販売する悪くない新興メーカーができたなぁ、と思っていたら、なんと今年で創業30周年ですか。おれも歳をとったものだ。

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なんかロゴはかわったし、完成車両とか、HOなんかもやってるようだけど、いい感じでやってるようだ。営団400系キットもしびれる。「サインカーブ メタリックキット」とかちゃっかり別売で出しているところもいかしてる。サインカーブの営団丸ノ内線は僕も大好きな車両で、いまはアルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄で走っているのだが、しらべたらちゃんとわざわざ現地にいって写真をとってきた人とかいて、すばらしい。あと営団のあの数字フォントは、宇宙でいちばん美しい数字フォントだとおもう。

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カツミ金属

なんともうれしかったのがカツミ。硬派のHO完成品/キットメーカー、鉄道模型はやっぱ金属、真鍮キットを磨き上げハンダづけし組み上げる、ブースにも100Wクラスのハンダごてが並んでいて頼もしい。

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なんつってもこのノレンがガツンとキマりすぎている。このノレンがキマるのは、硬派メーカーのカツミをおいてほかにあるだろうか。ほとんど涙腺がじーんと来てしまった。とにかくかっこいい。何度も何度もながめた。

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自作といえばピラニア鋸ですよ!

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特にペーパーで窓枠のアールをきれいに打ち抜くには各種ポンチしかないわけですよ!

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スイス製とかいいピンセットなしでは、人の人生は死んでるのと同じわけですよ!

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関水金属

最後のシメが、御大、カトー (関水金属)。関水金属の本社は小学校のころのおれの家の近所にあって、おれとしてはそれは大変に誇りにおもえることだったのだが、今年はNゲージ誕生40周年ということで、いろいろ記念品的なものが展示してあった。

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あ。

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こ、これは、おれが小学生のときに、死ぬ思いで貯金してやっと買った、大事な大事な大事なパワーパック、あれそのものだ!

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確かに、たしかに当時はレールはこの紙箱に入ってたよ!

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これまた死ぬ思いで買った、電磁切換えポイントセット!切換えは、スイッチを一瞬だけぽつんと押すんだが、あれれ? と若干押したままにしてると、あっと言う間にリレーが放熱して、いやーなにおいと、細いけむりがポイントから立ちのぼって、リレーをおさめたプラケースが、ぽや〜 と膨れあがってくるんだよな。そこでまた死ぬ思いの800円 (体感価格、今の5万円) を握りしめて泣きながらイトウ模型ですよ。

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おしまい

そんなわけで、私は脳内がすっかり30年まえに戻ってしまい、瞬間風速的には、仕事も家庭も何もかも捨てて戻りたい、という勢いであった。

黒澤映画「八月の狂詩曲(ラプソディ)」は、主人公のおばあさんが、頭のなかがついに昭和20年8月6日に戻ってしまい、ピカが、ピカが落ちてくるねんで… とよぼよぼと走り去っていくなんとも切ないラストシーンで幕を落とすが、あんな感じ。

あと、Nの連結器が、かなり各社いろいろいいものが出てきたことに感心。もちろん昔ながらの例のでかくて不格好なやつはいまだにデファクトスタンダードのようだし、なつかしいケイディ・カップラーも健在のようだが、それ以上に、相当本物そっくりの密着式連結器 (実はその真下でこっそり握り合って連結している) とか、さらにすばらしい、本物そっくりで機構も同じな自動連結器などがあって、感心する。というかいろんな出展者のかたにお話しして、いろいろ教えていただいた。先方も、30年前で知識が止まっている人間と話をするのは面白いことがあったようだ。

あと一点疑問。HOゲージは1/87で16.5mm. Nゲージは1/150で9mm.でもこれは欧米の標準軌 (1,435mm) にあわせたスケールであって、そのまま1,067mmで走る国鉄車両などつくるとどうも股が開きすぎで不格好、なので各社とも日本の車両は微妙に1/82だの1/140だの、ちょっとおおきめに作ってゲージとの見た目のバランスをあわせていたのだが、
ストイックな人たちは、国鉄の1,067mmを1/87にしたらそれは12.2mmじゃないか、つまり国鉄車両をHOで走らせるなら、レールのゲージ幅は12.2mmであるべきだ! として、車輪もレールもポイントも何もかも自作していた。
というのがあったと思うんですが、彼らは死滅してしまったのですかね?また、こういうの何ゲージっていうんでしたっけ?

とまぁ、息子と一緒にしばらく外の空気をすいつつ休んでいるうちに、頭が通常にもどる。いっしょに新宿のたちぐいそばで蕎麦くって帰宅。

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