国際鉄道模型コンベンション

(写真はこちらへ)

きょうは息子と二人でどっか遊びにいくつもりだったので、国際鉄道模型コンベンションというのをチェックしておいた。朝からずっと宿題をやってる息子を、勉強ばっかやってるとバカになるぞと連れ出し、クルマでビッグサイトへ。

ビッグサイトにいってみると、東のほうはジャズフェアといったものをやっていて、しかし目的地は西のほうなので向かってみると、鉄道模型をやってるのは2Fで、1Fではなんとハムフェアをやっている。

たしかになんとなく、西のほうに向かうと、歩いている人が太かったり、細かったり、みんなファッションがステキだったりして、アキバなオーラが放たれていたのだが、つまりそこでは、「鉄」vs「ハム」というかなり強力なタッグマッチが、ビッグサイトの 1F と 2F, 高低差 10m ほどでしのぎを削っていたことになる。

ハムフェア

ちょっと覗いてみると、さすが八重洲無線とか ICOM とか STANDARD といった、ビシっとキマった老舗のブースがたちならび、本物感でむせかえるようだ。
考えてみれば、これこそが古き良き秋葉原の文化、今を去ること二十年以上前、中学生のぼくがBit-Inn に PC-8001 を見に行っていたころの、ただしい「あきば」であって、昨今のエロだのコスプレだのといった腐れゴミ溜めの「アキバ」とは大違いである。たいへん申し訳ない先入観を最初もってしまった。

とはいえ、俺がむかし20年ぐらい前に友達に連れられていったハムフェア(晴海)も、会場のすみっこにいくと、中古タクシーメーターだの、米軍放出の手榴弾のドンガラだの覆面パト偽装キット、さらに奥にいくとセル画とか使用済セーラー服とか、ドイツ国防軍の軍装をまとって MP-38 をかまえる岩井由紀子(ゆうゆ)のポスターだの、そんなのばかり売られていて、つまり結局昔からやっぱりアレだったわけだけどね。

というか岩井由紀子さんは、当初ホビージャパンとかのミリタリールック専の女の子モデルさんとしてコアな認知をされていて、そんな彼女が隣の嘉悦女子から「おニャン子クラブ」にエントリーしたときの驚愕は記憶に新しい。
嘉悦は私立女子高の CI テコ入れの先達としてもなかなかで、前身の東京商業女子のイメージをひきずるダサいジャンパースカートからブレザー系(つっても頌栄のパクりだけどね)への転身をはかり、ロゴやフォントも一気にヒラギノ系にサンセリフなリニューアル。それまでの学園祭の校門前にはシャコタンの 430 セドグロにウンコ座りのソリコミ系彼氏がたむろしていたのが、翌年にはそれなりに2年落ちの 銀320i とか赤アウディ80 が、白百合と靖国神社と朝鮮総連のはざまに停車するようになったのも、なつかしい思い出だ。

ライブスチーム

って関係ない話はともかく、ひとまずお茶でも飲もうと隣のオープンスペースにいってみると、あるわあるわ各種ライブスチーム。
いきなりなかなか素晴らしい。

当然、こどもさんを載せていっしょにミニ列車に乗りませんか系のイベントをいろいろやっていて、それなりに待ち行列もできているのだが、もうこんなのに並んでよろこぶガキじゃないよなと、適宜息子を煽りつつ、屋内のメイン展示のほうへ。

展示会場

もうね、

私は小学校から中学1年ぐらいまで、それなりに N ゲージをやっていて、レイアウト (鉄道模型レイアウトを「ジオラマ」という奴は殺す)やらシーナリーやら、当時出はじめだった鉄道模型用 ATS (3セクション)、車両自作とかやっていて、それなりに濃い思い入れが脳の奥底の長期記憶の引き出しに深く静かに沈潜していたわけなのですが。

それが30年ぶりにひらいた。

長期記憶のかなたから、奔流のような、シナプス電気信号が湧き出てくるのは、異様な生理的快感に倒れんばかりである。

メルクリン

「日本におけるドイツ年」企画も協賛しているようなので、ということは、つまり、

会場はいっていきなり、大レイアウトで、メルクリン!メルクリン!メルクリン!である。

あいかわらず、架線集電とか、精密動作確実な転車台とか、ドイツ人に動作精密なものを作らせるとすごい。(味があるかは別として)
メルクリンの HO は伝統の交流式だが、ほかにも機関車のパンタ上下とかも操作していたので、いまはもう、なんか別のデジタル信号とかも重畳して流してたりするんだろうな。

僕がやってた小学生のころ、もちろんメルクリンは機関車がペーペーサラリーマンの月給ぐらいという高級品なので、動くのを見るのは世田谷の歯医者さんちの同級生とか、おかあさんが有名作詞家な麻布の同級生とか、そういうところに伺っての話なのだが。

普通の鉄道模型は左右のレールにそれぞれプラマイの直流を流し、電圧の上げ下げで電車のスピードを制御する。そしてプラマイをマイプラに切り替えると進行方向も逆に。という構造。
シンプルなのだが、右側レールと左側レール、これらが接触してしまうと電気的にショートしてしまう。なのでポイントの設計がめんどくちゃい。

あとさらに面倒な問題として、たとえば「P」の字のように、ポイントを直進した線路がぐるっとまわってまた戻ってきて、同じポイントの切換え反対側につながってますーなんて構造をうっかり作っちゃうと。メビウスの輪じゃないが、左側レールだったものがめぐりめぐってそのまま右側レールにつながって、ありゃ、こりゃ電気流したらショートするより他ないじゃん。ということになる。

なので、こういう P型とかクロスするような線路を直流式で作る場合は、列車の長さ以上に絶縁区間を各所に設計し(ギャップを切る、という)、あっちの区間に電車がいる間にこっちの区間のプラマイを予め反転させて帰りを待っておき… という論理的思考に基づいた面倒な運転制御が必要になる。
ここはほんと面倒くさいところで、「レイアウト入門」といったような鉄道模型の入門書には、必ず中盤以降にしつこくギャップの切り方の解説や、下手するとギャップの例題と回答集まで並んでいて、それはまるでC言語を覚えようとする初心者に襲いかかるポインタのポインタの理解のような話であり、ここでつまづいてレイアウトへの道をあきらめてしまう少年たちが、実に年間5万7千人近くいると、電通の調査でも明らかになっている。

しかし西ドイツの名門メルクリンの交流式にはこの問題が無いのであります。レールとレールの間に点々とツノが出ていて、レールがアース、点々から集電。好きなようにレールをつないでいってレイアウトしようが、ギャップをどう設計したものかといった問題とは無縁なのであります。(って、これは交流だからというよりは、レールの左右にプラマイを写像してないところがミソなんじゃないか、と気づいたのはもうちょっと経ってから。)

なので、モーター回転が前進かバックか。という状態は機関車が持ってる。その状態の切換えは、線路に一瞬だけ、ふつうの運転に使う以上の電圧をかける(たしか 16V) ことでおこなう。これをやると、機関車内部のリレーが切り替わったカチャという音が聞こえてきて、ここがまたさすが西ドイツ。と、小学生のぼくはしびれたものだ。こういう仕様なので、手元のパワーパックから方向切換信号を出した瞬間、むこうのレール上の機関車が一瞬びくっとする。これもしびれる。
あと、うっかりレールに手をついてると、さすがに16Vなので、本当に一瞬手がしびれる。なので、大人になった今でも、「感電」「西ドイツ」と聞くと、メルクリン…16V… という連想が脳内をよぎる。

(続く)