「血族」完成プレミア上映会(続)

みてきた。横浜の赤レンガ倉庫は実に雰囲気のいい、開放感があって洒落たところで、聞いた感じだとイベントスペースとしての料金も結構安い。いろいろ使えそうだ。

上映は、DVD作品を大きな銀幕に DLP 上映するとエイリアシングやブロックノイズがかえって鮮明に映ってしまってちょっと厳しいなぁとか、PA がちょっといまいちで、しかも大音響につれて銀幕が揺れてしまってせっかくの画止まりがつらいなぁとか最初おもったものの。

主人公の白日夢から、戦国時代に意識が遷移して画がモノクロームになったあたりから、そんなことはすっかり忘れてしまった。つまり作品に没頭してしまった。

本作は最初15分程度のミニムービーという企画だったものが、だんだん膨らみ成長して 40 分の尺になったというもの。

あまり説明してしまうとネタバレかもしれないが。黒澤監督の「七人の侍」という、あまりにも偉大な映画、これのエピゴーネンというか捧げたオマージュとしても堪能できる。人の作品を説明するのに、こういう喩え方は失礼にあたる場合もあると思うが、「七人の侍」の偉大さ、そしてこの「血族」の出来の良さに鑑みると、決して本作を貶めるものではない。

本作には出演者の台詞がない。導入部と結構部(両方とも現代)にはナレーションがはいるのだが、それだけ。あとは、戦闘の気合いの音声(おんじょう)、そしてなんともすばらしいサウンドトラックで構成されている。この音編がすばらしい。寺院の大きな太鼓を収録とか、音編集をわざわざUSでやっている凝り、そして音楽もそうだが、全体をながれる、現代音楽のような、インダストリアル系のパーカッシブなノイズというか、この気合いと情念と殺伐がミックスされた独自で激しく陰影ゆたかな音世界が、「七人の侍」の後半、大団円からストーリーの終結に向かうあたりを思わせる、野武士と村人たちの激しい戦闘と、ちょっとこれ以上はないほどマッチしている。

戦闘シーンは本作の大部分を占めるものだが、待ち伏せから結末に至るまで、絶えず良質の緊張感と迫力、美しさが保たれている。美しさとはいっても、むしろ演出上のカメラのブレや響き、粒子の粗さ的なもの、そしてかなりの部分を占める埃と砂と泥。名作「十二人の怒れる男」で知られる映画監督シドニー・ルメットは、レーザーディスク版「七人の侍」に寄せた一文の書き出しと結びを「埃、風、雨、炎…」としているのだが、この様式美は本作においても受け継がれ、むしろデジタルの鮮明さを伴ってよみがえる。

とまぁいろいろ書きましたが、イントロと末尾の現代部分についてはウェル・メイド・プレイのヘッダとフッタということで、あの黒澤世界のデジタルリミックスともいえる本作、機会があればぜひ見てみていただきたい。
役者もなかなかいいです。野武士たち、スキンヘッドの蒙古系の奴は、クラシック様式系の悪い奴なのだが、彼らの頭領であるまだ若い悪玉は、そこへいくとなんというかドラゴンボール世代の悪い奴ビジュアルである。それが、画が白黒であることも手伝っているのか、戦国時代のアウトローとして意外なほどマッチしている。物見に出た村人を捕らえ、泣きわめき怯えるそのさまを眺めながらニヤリと嗤うところには、「ブラック・レイン」における松田優作級の「こいつ、無茶苦茶悪そうなやっちゃなー」という爽快感を覚えた。笠原竜司という役者さんらしい。

無論松永くんをはじめ、IMAGICA時代のみなさんに会えたのもよかった。みんな変わってないねー。