三島由紀夫レター教室 / 三島由紀夫

数人の男女の、手紙のやりとりの、文面の羅列だけで構成される、異色の作品。戯曲のような、あるいはロールプレイングゲームのノベライズのような、あるいはもっと極端にいえば電車男とかのまとめサイトのような、実験文学ともいえる。

もっともこの作品は、そういった実験というか試験管とか白衣とか青臭い衒いとは無縁のもので、非常に軽い、軽薄なテイストでまとめられている。とはいえ筋もある程度なめらかに入り組んでいて、気軽なエンタテイメントとしてなかなか悪くない。三島由紀夫はけっこうこの手の「軽薄な」作品も多くて、これはこれで好き。不道徳教育講座とかね。仮面の告白とか、あとそれはもう禁色とかも大好きなんだけど。その中間にあたる?美徳のよろめき永すぎた春あたりの、恋愛系中間小説も良い。

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)