スーパーくにびき

出雲市に戻る。目的地は浜田なので、さらに特急「スーパーくにびき」に乗る。二両編成のディーゼル特急で、振子式車両だ。

ぼくが電車を好きだったころは、振子式というと国鉄の技術の粋のひとつで、しかしコストがかさむのか、あるいは「船酔いする」という悪評のせいか、中央本線の381系? 特急車両にしか使われていなかったけど、息子のでんしゃの本を見る限りでは、いまはいろんな路線でいろんな車両が活躍しているようだ。

スーパーくにびきはキハ187系という車両で、これ、まじで、最高。

振り子式

鉄道車両でも自動車でも、高速でカーブを通過しようとすると、遠心力で車体が外側に傾いてしまい (ロール)、接地力が減少し、安定力、操安力が低減し、さいごにはひっくりかえる。

これに対するアプローチとしては、

  • なるべく車体を低く、サスペンションを硬くして、ロールしないようにする (日本人、ドイツ人)
  • ロールはするもんだからまぁいいじゃん、そのかわりサスもやわらかく長くしてなるべく接地させていよう、そりゃロールは恐いけど、でももともとそんなにスピード出してるんだから恐いのは自然なことだよ (フランス人)
  • センサを車体各所に設け、サスペンションを油圧なり空気圧でアクティブ制御し、ロール時にはむしろ逆方向に車体を傾ける逆ロール制御をしよう(R&D 予算をいっぱいもらったオタク)

などがあるが、ここを一種のパッシブ? 制御するのが振り子式車両。

車体の重心を極度に下にまとめ、これを左右方向へのころがりを許すサスペンションを設け、左右のぐらぐら遊びがありまくりの状態に車体をおき、空高くにある仮想的な回転中心からぶら下がった振り子のようにする。これが高速度でカーブに突入すると、普通なら車両の上のほうから遠心力で傾きはじめるところを、振り子式車両は車体の下だけがカーブの外側にずずずとずれて、車体の上はむしろカーブの内側にずれる。

結果として、バイクとかチャリとかスキーとかボードで、ライダーがカーブの内側に体をかたむける、これが自動的におこる。乗り物の胴体がこうなる、しかも腰上だけで。というのがたまらん。

優れた車両からはオーラが出ている

子供のころやっと381に乗れたときは、なんかいまいち傾かないなぁ、と不満だったのだが、キハ187系のそれは、もう、満足度タップリおなかいっぱい!コーナーに突入するたびに、ずるん、ずるんと、ライダーとかサーファーの挙動のごとく逆ロールする。

そのコーナー突入も、このスピードでこのカーブに突っ込むかい! というぐらい、たとえクルマでもそこそこイケる車じゃないと結構おっかないという速度で、ひとつひとつ攻めの速度でクリアしていく。線路と並行して走る国道9号線の生意気なスカイラインなんかはびしびしチギりまくりであります。

さらにまた、停車駅前のきつい下りの最終コーナーのアプローチで、トランスミッションの回転数を合わせるためか、ヒール・アンド・トゥ的にボボボグルルルアァァ…とディーゼルターボエンジンの雄叫びがはいったりして、たまりません。